町の花ダリアも、雑草も...自然が宝 草木染で町の色を表現 一点物のモノ作り《もっと!ぐっと!塙町》
福島県の南部、人口約8000人の塙町は、阿武隈山系や八溝山系に囲まれ、街の中心を久慈川が流れる自然豊かな町だ。風呂山公園のツツジなど「花の町」をうたう塙町といえば、町の花にもなっているダリアが有名。このダリアを使い、神奈川県から移住した女性が町おこしに取り組んでいる。
<博覧会をきっかけに>
塙町の人が「明るいイメージ。町を支えてくれればなと思います」「学校に花壇があり、どんな風に咲かせるかという、いい意味での競い合いもある」と話すダリアは、いまや町のシンボルとなっている。
きっかけは、23年前・2001年に福島県須賀川市で開催された地方博覧会「うつくしま未来博」だった。塙町がダリア園を出展したことをきっかけに、特産品としてイメージが定着した。今では6軒の農家が栽培・出荷している。
<廃棄されるダリアを活用>
このダリアを生かして、新たな製品づくりに挑戦するのが土井眞穂梨さん。
この日、ダリア園から譲り受けたのはカゴいっぱいの色とりどりのダリアだ。咲き過ぎてしまったものや、廃棄する予定のものをもらっているという。
土井さんが手がけるのは、ダリアを使った草木染めで、2024年8月に本格的にオープンさせた自身の工房「870クラフト」でオリジナルの商品を製作・販売している。
<一点物の色合い>
土井さんのダリア染めは、まず凍らせたダリアをお湯に入れ花びらから色を抽出。そうして出来上がった染料に、布や糸をひたし染めていく。
その後、色落ちを防ぐための薬剤につけてから、もう一度染め重ね、乾かせば完成だ。一つとして同じ色に染上がることはなく、まさに"一点物だ。
土井さんは「その年に採れたものによっても色が変わるので、同じダリアでも同じ品種を使っていても違うところが魅力」と語る。
<自然を原料に すべてが宝の山>
土井さんが、ダリア染めを始めたのは3年前。都会から離れた場所でモノづくりに関わりたいと、地域おこし協力隊として移り住み、塙町の特色を生かしたお土産の開発などを行ってきた。
自然にあるもので様々な色合いが表現できることが魅力だと話す土井さんにとって、厄介者として知られるセイタカアワダチソウも立派な原料となる。
「染料としては優秀なもの。都会の方から見れば、この辺りの自然自体が、宝の山だと思います」と土井さんはいう。
<色で表現できることを伝えたい>
2024年5月に地域おこし協力隊としての任期を終え独立した土井さん。今はワークショップやイベントなどで、ダリア染めの魅力を広げることにも力を入れている。
「塙町のお土産品といったら、草木(ダリア)染めとなるまで。色を使ってモノづくりにも応用できること、見るだけではないことを発信していきたい」と土井さんは話した。
自然豊かな場所で、マイペースに生活するという夢を叶えた土井さんは、これからも花々と向き合いながら「塙町の色」を表現していく。