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原発処理水の放出開始から1年  首都圏のスーパーも「応援する気持ちは変わらない」 岸田首相が交わした福島との約束の行方

東京電力・福島第一原発で発生し続ける処理水を薄めて海に流す「海洋放出」が、開始されてから1年が経過した。国内では目立った風評被害は見られていないものの、中国は水産物を含む福島県産の多くの食品の輸入を規制するなど、6つの国と地域は輸入規制を継続している。
処理水の海洋放出に関して、政府は「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」と繰り返してきた。漁業者は反対の立場を示し続けたが、岸田首相は「漁業が継続できるよう、国が全責任をもって必要な対策を講じ続けると約束する」と強調し、2023年8月24日に放出が開始された。

東京のスーパーで福島フェア

「甘い、ジューシー、おいしい、本当に最高の出来です。食べていただくと甘い香りが立って広がって疲れた心体が癒されるので、試してみてください」
東京都・板橋区。福島県の内堀知事はスーパーの店頭に立って旬を迎えた福島自慢のモモ・あかつきをPRしていた。

「まるごと福島フェア」が行われたイオンスタイル板橋。店内の目立つ場所に設けられた特設コーナーには、福島産のモモやキュウリ、銘菓や地酒など450品目がずらりと並んだ。

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おいしい常磐ものを店頭で

イオンと福島県は、2008年12月に防災協定を締結。さらに東日本大震災後の2011年9月には包括連携協定を結び、連携を深めてきた。このうちイオンリテールは、2018年6月から福島県や県漁連とともに福島県で水揚げされた新鮮な魚介類を店舗で販売する「福島鮮魚便」の取り組みを進めている。

"潮目の海"と呼ばれる福島県沖は、黒潮と親潮がぶつかり合う豊かな漁場。水揚げされた水産物は「常磐もの」と呼ばれ品質の高さが評価されてきたが、震災・原発事故で漁は中断。福島県の漁業者は、一部の魚介類に制限して行う試験的な漁から再開し、国の基準値より厳しい基準を設けて放射性物質検査を続け、安全性の確保を徹底してきた。

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専門の販売員が消費者にPR

イオンリテールの「福島鮮魚便」コーナーでは、専門の販売員がその日入荷した新鮮な海産物をおすすめのレシピとともに直接消費者にPRしてきた。この日「福島鮮魚便」のコーナーに並んだのは、県産のヒラメやマアジ、カナガシラにタチウオ。おすすめレシピではカナガシラのアクアパッツアを紹介していた。

「福島鮮魚便」の取り組みが始まった当初からコーナーを担当してきた販売員の女性は「なにより活きがいいので一度召し上がっていただいたら、良さ・味の違いが分かってもらえます」と県産の水産物の質の高さに太鼓判を押す。

販売する魚の種類は豊富で、首都圏の消費者が知らない魚も多くあるため、どうやって食べれば良いかよく聞かれるという。店頭でおすすめレシピを紹介しているのもこのため。販売員の女性は「私たちもレシピを勉強しています。現地に行って福島のお母さんたちにメヒカリの調理や揚げるコツを聞いてきている」という。

子どもを連れた家族に販売員の女性がアナゴをすすめると、父親は「いろんな種類があっていい」と話す。安全性への不安などがあるか聞いてみると「全然ないです。きょうはアナゴの天ぷらにして家族で楽しみたい」とこたえた。

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販売員も消費者も安全性を理解

イオンリテールの販売員は処理水に関する勉強会で理解を深めた上で、そのおいしさと安全性を伝えている。販売員は「福島ではずっと魚の検査していることを伝えると、逆に安心だねと言われる。"常磐もの"のおいしさを一人でも多くの人にわかっていただき、福島沖の"潮目の海"の魚だということを皆さんに教えたい」と語る。

イオンリテールが海洋放出の開始後に販売員にアンケートを行ったところ、買い物客から寄せられた声のほとんどが福島への応援や調理方法に関する質問で、不安の声は一割程度にとどまったという。

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夏もおいしい福島

9回目を迎えたイオンリテールの「まるごと福島フェア」。これまで10月に開催してきたが、2024年はモモなど旬の美味しさを感じてもらおうと初めて8月に開催した。

イオンスタイル板橋の浅野裕之店長は「正直なところ、風評被害があるのかと疑問を持つくらい板橋のお客様は通常商品と同じように安心して購入していただいている。その部分では、福島の業者にも一定の安心感を感じてもらえているのではないか。風評の問題や各地域の方が抱える課題解決に、我々の活動が少しでも支援になればという思いで実施しているので、福島の方にも板橋のお客様にも喜んでいただける"福島フェア"をこれからも続けて、応援したい」と話した。

震災・原発事故から14年目、首都圏の流通の現場では福島を応援しようと取り組みが続けられている。

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首相が交わした福島との約束

2024年8月24日。海洋放出の開始から1年が経ったこの日、岸田首相は福島県いわき市の魚市場を訪れ、魚介類の放射性物質検査などを視察。「"今後、長期になろうとも全責任をもって対応する"と申し上げた。この思いはいささかも変わるものではなく、必要な措置をこれからも続けていくことは当然であると考えている」と話した。

処理水の海洋放出と福島第一原発の廃炉、そして住民の故郷への帰還に福島県の環境回復・避難地域の復興など数十年かけて取り組むべき課題は数多く残る。岸田首相は次回の自民党総裁選には出馬せず退陣する。この先、首相が何度変わっても、岸田首相が日本政府のトップとして口にした「全責任を持って対応する」という約束は変わらず守り続けていかなければならない。

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