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新風吹き込む4代目たちの挑戦 一条豆腐店×中野屋菓子舗 異色のコラボ「チーズケーキ」でヒットの予感
昭和7年創業の一條豆腐店と大正12年創業の中野屋菓子舗。福島の老舗2店の4代目が、伝統の技を守りつつ新たな挑戦に踏み出した。豆腐とチーズケーキが融合した「御とうふなチーズケーキ」は2カ月で2200個以上を売り上げる予想外の人気商品に。職人技と革新的アイデアが織りなす、地域に愛される味の物語が今、始まっている。
地域に愛される豆腐店
昭和7年創業の「一條豆腐店」(福島県伊達市梁川町)。昔ながらの製法で作る、自慢の豆腐の味を親子3代で守っている。4代目の一條司さん(30)は「人の出来る部分は人の手によって丹精に丁寧に作ることで、素材の味をいかしたお豆腐を作ることを心がけております」と話す。
息子の思い・父の思い
司さんは以前、営業の仕事をしていたが4年前に実家に戻る決断をした。「ものを作ってお客様に喜んで頂く仕事をしたいなと。実家がなくなるのも嫌だなという思いもあり、それでお豆腐屋さんに戻ろうと決心した」と司さんは語る。
しかし、3代目で父親の巧さん(57)は「不安のほうが大きかった。時代背景として、生産性という大きな流れがあったので、個人事業主で生活していけるのか」という。
そして一朝一夕では身につかない職人の技。豆乳を固めるための「にがりあわせ」の作業は、わずかな力加減が出来上がりを大きく左右する。2代目の巖さん(86)は「人にこうするのですよと言われて、その通りやってもなかなか出来ない。自分の体で覚えないとできない」と語る。
とりあえずやってみよう
豆腐業界を取り巻く環境の変化、技術を身につける難しさがあるなか、4代目・司さんのモットーは『とりあえずやってみよう』だ。
卸売一筋から一転、一條豆腐店として初めて直売所での出張販売などを始めた。「豆腐にはこういう食べ方あるとか、入口をたくさん作ることによって、手作りの豆腐はいいものなのだよというのを世間に広めていきたいなと」と司さんはいう。
地域に愛される菓子店
そして新たな『入口』を作るべく向かったのは、福島市の繁華街に店を構える「中野屋菓子舗」。大正12年創業・100年以上の歴史がある老舗菓子店で、看板商品の豆大福をはじめ季節に応じた和洋菓子が並ぶ。
主に洋菓子を手がけるのが4代目・早坂知弥さん(30)。東京の洋菓子店などで修行を積み3年前に戻ってくると、洋菓子のラインナップを一新し、これまでに50種類ほどのケーキを生み出してきた。
中野屋菓子舗4代目の早坂さんは「ひとつ工夫を凝らしたケーキを作りたいなと。福島県のフルーツがおいしいので、そのフルーツの良さを最大限にいかしたケーキを作ることを意識して作っている。そういったところを味わっていただきたい」と語る。
さらに出荷制限が解除された信夫山のゆずを使ったチョコレートを作るなど、初めての試みにも前向きに挑戦している。
4代目同士 新しい挑戦
老舗の菓子店と豆腐店、それぞれの味と技を最大限活かしコラボ商品を開発した。
中野屋菓子舗4代目・早坂知弥さんは「本当に上手くいくのかなという不安もありつつ作った商品」といい、一條豆腐店4代目・一條司さん「どういう風に着地するかもわからないまま、まずやってみようと」という。
クリームチーズと砂糖などをミキサーで混ぜたら、豆腐1丁を投入。ここでポイントとなるのが「レモン果汁」。入れることでチーズや豆腐のクセを少なくし、苦手な人でも食べやすくなるのだとか。さらにゼラチンを溶かした生クリームも加え、再びミキサーにかけたら丁寧にこし、豆腐のなめらかな食感に近づけていく。その後スポンジの入った型に流し込み冷やした後に、おからで作ったクランブルをのせたら「御とうふなチーズケーキ」の出来上がり。※「御とうふなチーズケーキ」450円
コラボ商品 予想以上の売れ行き
中野屋菓子舗4代目の早坂知弥さんは「通常のチーズケーキより、カロリーが控えめにできている。最後に一條豆腐のにがり豆腐がフワッと香るような形にした」と話す。
販売開始から2カ月ほどで2200個以上が売れるなど、予想以上の反響があった。中野屋菓子舗の早坂さんは「不易流行という言葉がある。そういったことを続けていきたいなと思います」と語る。また一條豆腐店4代目・一條司さんは「どんどん間口をひろげて、いま衰退している豆腐店をもっと盛り上げていけるような商品の代表格として、御とうふなチーズケーキには今後も先陣をきって頂きたい」と話した。
守るものは守り、変えるものは変える。老舗4代目・2人の挑戦はこれからも続く。