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防災大百科

いつかは起きる災害 過去の経験を防災に活かす

2025年1月は「能登半島地震から1年」「阪神・淡路大震災から30年」という、大きな災害を思い出すきっかけがあった。そして1月13日に宮崎県で発生した地震では「南海トラフ巨大地震」の恐怖を感じた人もいたのではないだろうか。福島県では1月23日に檜枝岐村で震度5弱の地震が発生している。今だからこそ「大災害への備え」について考える。

今は大きな地震のタイミング

大きな災害が発生する可能性は高まってきているのか?東京大学大学院の客員教授で防災行動や危機管理の専門家・防災マイスターの松尾一郎さんは「2024年1月に発生した能登半島地震は、沿岸部で4メートル近く地盤がせり上がった。同じような地震は、1000年~2000年のサイクルで起こっているようだ。東日本大震災も津波の痕跡から、869年の貞観地震と同様な規模だった。つまり、いまは大きな地震のタイミングにあるようだ」と話す。
また、福島県檜枝岐村で頻発する地震について「体に感じない地震も含めると、回数は2000回近い。小さい地震が積み重なれば、大きな地震にも繋がる。家具固定や非常持ち出し袋などの用意は進めたい」という。
遠くない災害に向け、その教訓から学べることはあるのだろうか?

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各地で震度5以上の地震

2025年1月23日に福島県会津地方を震源とする地震が発生し、檜枝岐村で震度5弱を観測した。気象庁によると、檜枝岐村で震度5以上を観測するのは2001年12月の観測開始以来初めてだという。
また1月13日には、宮崎県の日向灘で最大震度5弱を観測。気象庁は「南海トラフ地震臨時情報」を発表したが、地震の規模が基準より低く「調査終了」となった。
一方で、南海トラフ巨大地震の30年以内の発生確率は「80%程度」に引き上げられた。
南海トラフ巨大地震では、最大震度7の強い揺れや10メートルを超える大津波が予想され、32万人余りが犠牲になると想定されている。全国各地で、大きな災害の恐れを感じさせる事象が相次いでいる。

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減災...過去の災害を自分事に

大災害は「いつ」「どんな形で」やってくるか分からない。福島県浪江町のまちづくりに携わる葛西優香さんは、小学2年生の時にふるさと・大阪で「阪神・淡路大震災」に遭った。
6434人が犠牲となった阪神・淡路大震災から30年。この経験を福島につなげたいと、浪江町に移り住んだ葛西さん。「経験した人の言葉が一番納得感あるとか、自分も備えなくてはと思えると言われる。それぞれが、どうあの経験を捉えているのかを、少しでも吐露出来たり、共有出来たりする場づくりを継続的にやっていくことが大事」と言うように、これから起きる災害を少しでも防ぐためには、過去の経験をどれだけ"自分ごと"にできるかが大事だと話した。

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災害対応 人災育成を進めるべき

私たち一人一人の心構えも重要だが、「大災害への備え」をめぐっては行政も課題を抱えている。
福島テレビと防災協定を結ぶ福島県内の自治体を対象に、防災マイスターの松尾さんが行ったアンケートの結果では「東日本大震災の被災直前、当時の防災担当職員の数」は、回答した自治体の約半分が「3人以下」だった。
震災が発生し、「安否確認」「救命・救助」業務に要した時間は、約4割の自治体が「1週間以上」。被災した家屋の応急危険度判定には、半数の自治体が「10日以上」と回答するなど、自治体の防災専門の職員が指揮できる範囲を大きく超えた対応が求められた。
自治体からは「被災自治体では限界があり都道府県単位などで人材育成を考えるべき」「国が率先して人材育成を進めるべき」といった声が聞かれる。

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経験を次の災害対応にいかす

アンケートでは市町村単位では「限界がある」という声も聞かれた。東日本大震災や東日本台風、線状降水帯の災害対応を経験した福島県いわき市。危機管理課の間部芳文課長は「それぞれの自治体では、業務継続計画や災害対策本部の中で人員の割り振りは決まっているが、必ずしも全員が従事できるわけではない」と話す。職員自らも被災するケースが多いなかで、自治体職員だけで災害対応にあたるのは極めて難しいという。
間部課長は「東日本大震災、令和元年東日本台風で、日ごろの備えがいかに大切なのか身をもって実感した。その時の経験を、必ず次の災害対応に活かしていかなければいけない。災害対応経験のある職員の全国レベルでのリスト化や、職員の災害対応のスキルを上げていくための研修体制の充実、大規模災害時に市町村レベルでは調達が難しい空調設備などの物資を迅速に提供いただける支援を、国や県にしていただけると大変ありがたい」と話した。

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災害対応は経験がものをいう

防災マイスターの松尾一郎さんは「全国の自治体が、被災地を支援する手法として『対口支援』というやり方がある」と説明する。
東日本台風や福島県沖地震でも県内の自治体を全国の自治体が支援したという「対口支援」。福島県の市町村に実際受けてみてどうだったか聞いてみると、回答した11市町村のうち55%が改善すべき点があったと回答。「支援初期は経験者や理解ある人の派遣をしてほしい」「もう少し長期の対応をしてほしい」「指示待ちではない対応をしてほしい」との声が聞かれた。

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しかし、混乱する被災地に派遣される全国の自治体職員も経験がない中で大変だったはずだ。災害対応は、経験がものをいう。だから初動段階には経験や知識のある人が必要で、今後どういう技術を持つ人材を派遣するべきか、国が被災地をマネジメントする仕組みが必要となる。東日本大震災からまもなく14年、さらに東日本台風から5年。福島の経験を全国の被災地支援に生かすことが必要となる。

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