人口減少と自治体の存続 福島県でも33の自治体が消滅? 地域の特性を生かして《福島重大ニュース》
様々な出来事があった2024年。福島県内で今年起きた重大ニュースを振り返る。「人口減少」2050年にかけて全国で自治体が消滅するかもしれないという試算が今年4月に発表。福島県も例外ではなく、これからどのようなビジョンを描いていくのか各自治体に問われている。
<奥会津・三島町の過疎集落>
「ここも空き家だし向こうも空き家なんですよ。立派なうちが空き家になっちゃって...」と話すのは、三島町・間方地区に暮らす菅家壽一さん。間方地区の住民は48人、過疎集落の一つだ。
菅家さんは「人がいなくなって、もう動物だけがどんどん今もいるし増えてますけども、どんどんどんどん来るようになってくるでしょうね。このままだとなくなっちゃうしかないのかなって感じしますけどね。それでは困るんですけどね」と話す。
<人口減少が続く福島県>
県内に約2500あるとされる過疎地域にある集落。急速な人口減少によってそう遠くない将来、過疎集落だけでなく、自治体そのものの存続も危ぶまれている。
2024年11月1日現在、人口が約174万人の福島県。その数は急速に減少を続け、2030年に約164万人、2040年に約145万人、2050年には124万人余りになるという推計もある。(※国立社会保障・人口問題研究所)
<消滅可能性自治体は全国で744>
人口戦略会議・三村明夫議長は「日本は本格的な人口減少時代に突入した。このままでは日本経済は縮小スパイラルに陥り、国富を失い続け社会保障の持続性が大きく損なわれるのではないか」と話す。
2024年4月、有識者の会議が発表した「消滅可能性自治体」。2050年に全国で744。
福島県内では、33の自治体が消滅する可能性があるとした。(※浜通りの13市町村は原発事故などの影響を踏まえひとまとまりで推計)
試算の基となったのが、こどもを生む中心の年齢層である女性の人口で、2050年にかけて半数以下となる自治体は、最終的に消滅する可能性が高いとしている。
<高齢化率高くとも>
人口1088人の昭和村。高齢化率は県内でワースト3位。一方で消滅の可能性がないとされた自治体の一つだ。昭和村産業建設課の五十嵐邦明さんは「カスミソウの新規就農は最近のことだが、20年以上前からからむし織の織姫制度にも取り組んで、そういった部分が総合的に寄与しているかなと感じている」という。
<昭和村のからむし織とカスミソウ>
昭和村が取り組む「産業振興と移住」。30年前から始まった「からむし織体験制度」では、村に住みながら伝統のからむし織を体験する人を全国から募集。また、特産のカスミソウは移住者などの新規就農を支援し、生産量は日本一を誇る。
村の伝統・基幹産業を移住者の持続的な生業につなげ、定住に結びつける形を構築している。
<移住しカスミソウ農家に>
2年前、昭和村に移住したカスミソウ農家の菊地進二さんと結さん。移住者に対する地域住民の理解も大きいと話す。
菊地結さんは「何か困ってることないとか、何か不自由することはないですかとか、聞いてくれたりしたので、こちらもいろいろ聞きやすいというか、よそから来た人を受け入れる体制がすごく整ってるのだなということは感じました」と話す。
<自治体の持つ可能性を見直す>
自治体の存続に向けて何ができるのか?専門家はそれぞれの自治体が持つ可能性をあらためて見つめなおす必要があると指摘する。
福島大学行政政策学類の岩崎由美子教授は「(移住・定住は)地域の資源に光を当てて魅力的な仕事をいかにつくっていくかが、非常に重要なテーマの一つになるのかなと思う。また、次の世代が地域に対してどういう思いを持っているのか、どういう地域だったら自分が定住して暮らし続けたいと思えるのか、声を聞いていくのが大事。こどもが増えている自治体もあるし、女性が増えている自治体もあるから学びながら自治体の存続を考えていくのは大事。むしろ希望がある、希望を持てる地域にこれからなっていくと思う」と話す。
<地区で52年ぶりに生まれた命>
金山町・太郎布地区に暮らす青沼さん家族。山梨県出身の大さんは、田舎暮らしに憧れてこの場所に移住した。2023年11月に生まれた長女の玉來ちゃん(1歳)。太郎布地区で52年ぶりに生まれた命だ。
「いいな今日はな。パパとママと一緒で」家族だけでなく、地域住民が一緒になり、成長を見守っている。
青沼恵美子さんは「玉來らしくのびのびとでも好きなことをやったり、自然の中で遊んだり、金山町の人とか他の人たちと触れてたくさん出会って元気に育っていってほしい」と話す。
こどもたちが大人になったとき、少しでも希望に満ちた社会である為に。いま何をするべきかが問われている。