熊がいなかった地域でも目撃・捕獲が増加 拡大する生息域 冬眠明けの春先から活動活発に
冬眠明けで活動を活発している「クマ」。福島県内ではこれまでいないとされていた地域まで生息域を広げているとみられ、いつどこで目撃してもおかしくない状況になっている。なぜ生息域が拡大したのか専門家に聞いた。
■阿武隈川より東には生息しないはずが
福島県大熊町の有害鳥獣捕獲隊は、町内にワナを仕掛け、農作物などに被害を及ぼすイノシシやタヌキなどを捕獲している。4月14日、イノシシ用のワナにかかっていたのが体長1.6メートル、体重72キロほどのツキノワグマだ。
福島県によると、浜通りでクマが捕獲されたのは統計が残る2013年以降で初めてだという。
これまで県内では阿武隈川より東側にいないとされていたクマ。しかし、浜通りでも2023年は15件、2024年は31件と目撃情報は増加傾向にある。
大熊町有害鳥獣捕獲隊の吉田一二さんは「頭からクマの存在はないと思っているので、クマ鈴をつけたり前方を確認したり、周りを注意しながら罠の近くで点検して活動する」と話す。
大熊町では、4月中にクマの痕跡やエサとなる木の実などがあるかを調べる予定で、結果に応じてクマを捕獲対象に加える事も検討することにしている。
■生息域拡大...冬眠しないクマ
阿武隈川より東側にある浜通りでも捕獲されたクマ。専門家は、気候変動によって「冬眠しないクマ」が生息域を広げた可能性を指摘する。
福島大学・食農学類の望月翔太准教授は「一定数、夜のうちに阿武隈川を渡って。川を渡るというよりは道路を渡り阿武隈山地の方に入っていく。そうした個体が少しずつ増えていけば、当然そこで子どもを産んで、その子どもが大きくなってまた数を増やしていくというような状況になる。何年かかけてクマの分布が広がっているという状況」と話す。
■春は活動が活発に 人里まで
2024年は人的被害や住宅などへの居座りが相次いだクマ。
冬眠明けの春先から活動を活発にし、2025年は4月に入ってからすでに〇件の目撃情報が県内各地で寄せられている。
望月准教授は「冬眠明けのクマはエサを探し山から人里の方に降りてくると言う事例もある。人里の小屋の周辺とか、小屋の中にある農作物とか、そうしたものを荒らすという傾向もあるので、注意が必要。普段生活する中で、まずはクマ鈴とか音が出るものをちゃんと携帯すると言うことを徹底してほしい」と注意を呼び掛けた。
7月31日まで福島県内全域にはクマの出没注意報が出ている。山に入る際もだが、家の近くに山林がある場合は外に野菜やペットフードなどエサになるモノを置かないようにしてほしい。