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活火山が噴火するのは当たり前 万が一に対する備えは「知る事・避難行動を想像する事」
2023年5月11日、福島県の吾妻山で火山性微動が観測された。観測の状況を見ると、気がかりな部分も見えてきた。いつ噴火が起きるか分からない活火山。専門家は、登山者の心構えも重要と話す。
◇動画はYouTube 福島ニュース【福テレ】でご覧いただけます。
癖が分からない吾妻山
「火山性微動」は、地下のマグマや火山ガス・熱水などの移動で発生するもので、火山性「地震」よりも継続時間が長く、火山活動が活発化したときに多く観測される。
2022年8月7日以来となる吾妻山の火山性微動。2022年は3月28日にも観測されていて、これより以前は2019年。この時は、噴火警戒レベルが「2」へ引き上げられた。
小規模な噴火が発生する恐れがあり、大穴火口から1.5キロの範囲に噴石が飛ぶ可能性があるとして立ち入りが規制された。
東京大学大学院の客員教授で防災行動や危機管理の専門家・松尾一郎さんは「火山の噴火活動は様々。噴火に至るまで癖が分かる火山と、そうでない火山がある。吾妻山は、癖が分からない火山。だから前兆現象の見極めが難しい。一般的に火山性微動は、火道を溶岩などが通過している時に起こる。吾妻山の場合、火山性微動が観測されたら、噴火警戒レベルを2に上げる基準となっている。レベル2になると火口周辺規制になるので、火口から1.5キロは立ち入り禁止になる。そうなると様々な活動に影響が出る」と話す。
とるべき行動を意識する
「ここを中心にレベル2に上がった場合は、半径1. 5キロメートルの範囲は立ち入り禁止になります。一切経山から鎌沼あたり、小富士の山頂含めてこのあたりのエリアがすべて1.5キロの範囲に入ります。ここからは避難する必要がある」と話すのは自然公園財団浄土平支部の西村真一所長。
大穴火口から約750メートルにある「浄土平ビジターセンター」は、吾妻山が噴火した場合の避難場所の一つ。この場所が噴火対策を強化するきっかけとなったのが、2014年噴火警戒レベル「1」で噴火した長野県の御嶽山。登山客58人が犠牲になったこの噴火では、登山客に危険を知らせる方法や噴石から身を守る避難場所の確保などが課題となった。
浄土平ビジターセンターでは、登山客の安全を守るためヘルメット350個・ゴーグル100個などを備蓄。施設の屋根には、噴石の衝撃に耐えられる特殊な繊維が入っている。それでも、心配はあるという。
西村真一所長は「前回のレベル2引き上げの時は、たしか朝のうち雨が降っていまして、お客様が多くなかった。混雑している状況の時に、突発的な噴火が起きるというのが一番心配な点」と話す。
今年も登山シーズンに突入。今後、秋の紅葉シーズンになると500台の駐車場が満車になるうえ、駐車場待ちの列が1キロに及ぶことも。だからこそ西村所長は、訪れる人に伝えたいことがある。
「いらっしゃるお客様についても、火山地帯に観光登山にいらっしゃるということを念頭において。もし突発的に噴火起きた場合、どういう経路で避難しなければいけないかということも含めて、登山計画を立てていただいて、落ち着いてスムーズに避難していただければいいのかなと思います」
300年何もなくても安心できない
吾妻山で最後に観測された噴火は1977年。このときは、火口周辺でごく少量の降灰が確認された。火山活動がない期間が長くても、安心してはいけない。
防災行動や危機管理の専門家・松尾一郎さんは「火山噴火は息の長い活動。海外では9000年静かで急に噴火したところもある。富士山もいつかは噴火すると言われ300年何もないが、火山は必ず噴火するので安心してはいけない」を語る。
火山は噴火するのが当たり前
吾妻山の現状について、日本火山学会の会長などを務めた東京大学の藤井敏嗣名誉教授に話を伺った。
藤井敏嗣東京大学名誉教授は「御嶽山の場合は、地震が始まったのは11分前。山が膨らみ始めたのは4分前。磐梯山でも吾妻山でも、御嶽山と同じ噴火をすることは十分にあり得る。噴火しないのが当たり前と思っているかもしれないが、噴火するのが当たり前。自分が住んでいる所にどういう影響があるのかとか、自分の勤務先・学校に行く道路にまで影響が及ぶことがあるときには、何が起こるのかということはちゃんと理解しておいてほしいと思う」と話す。
防災行動や危機管理の専門家・松尾一郎さんも「福島県には、活火山が5つもある。吾妻山もだが、磐梯山も火山性地震・微動が観測されていて私は要注意だと思っている。活火山には、国と福島県が地元市町村と火山防災連絡協議会を設置して、その中で噴火への対策や防災対策を協議している。火山災害は広域に被害をもたらすから、県の役割は大きい。観光シーズンなので、規制をすることに地元は躊躇すると思う。でも火山は生きている。重要なのは火山がちょっと元気になったら規制をかける。落ち着いたら解除するというというような臨機応変な防災対応は必要だと思う」と話した。
噴火への備えも、他の災害同様"知ること"そして"事前の準備"が防災につながる。十分な備えをして、登山シーズンを楽しんでほしい。