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わがまち防災自慢 トップの思いと行動力が市民の命を守る!
災害から住民の命を守るために、市町村では様々な防災対策を進めている。市町村の代表者である市町村長や住民代表のみなさんから「わがまち防災自慢」ということで、それぞれの地域の防災について話を伺う。
今回、東京大学大学院の客員教授で防災行動や危機管理の専門家・松尾一郎さんが訪ねたのは、度重なる水害の経験を踏まえ整備を進める福島県郡山市。
◇動画はYouTube 福島ニュース【福テレ】でご覧いただけます。
内水氾濫を防ぐ調整池
品川萬里市長が案内してくれたのは、一見普通の公園。郡山市が抱えてきた課題を解決するための対策が、公園の地下に広がっていた。
2019年7月に、福島県内初の施設として運用が始まった「麓山調整池」は25mプール7杯分の水を溜めることができる。
この調整池は、周辺に降った雨などを一時的に溜めることで、冠水や浸水の被害を抑えるもの。郡山市麓山地区は、地理的に周辺から雨水などが集まり、道路が冠水するなどの被害が発生しやすいエリアだった。
郡山市・品川萬里市長:「この貯留槽ができる前は、ここは川かと思うくらい水が溜まりましたが、貯留槽ができたあとは車も自由に通れるようになりました」
既存の施設を活用し強化
調整池にたまった水は、もともとあった排水管から阿武隈川に流す仕組みで、既存の施設を活用し防災インフラの強化に繋げた。品川市長は「これから災害対策も点と線・線から面ではなくて、もっと広く防災ネットワーク、防災システムということで取り組まなければならない」と話す。
洪水防ぐ治水対策
過去の経験から対策が必要になったのがもう一つ。2019年の東日本台風による阿武隈川の氾濫。
被害を受けて国が立ち上げた「阿武隈川緊急治水対策プロジェクト」では川底の掘削などを実施中。ある地点では、約1.7メートル水位が低下することで、東日本台風と同じ規模の雨で氾濫しないことがシミュレーションで確認された。
国や県と連携をとりながら、市町村は「地域の防災の砦」だと考えている。
郡山市・品川萬里市長:「これは国・これは県って言っても、最後は市町村長がどれだけ責任感を持って取り組むかと。市民の皆さんのお力と、これまでの経験・情報・知恵をいただいて全力で取り組んでまいります」
事前の行動が重要
梅雨入りし、今年も洪水が起きやすい「出水期」に入った。
犠牲者を出さないためにカギを握るのが、事前の防災計画「タイムライン」これは、災害が発生する状況を想定し「いつ」「誰が」「何をするのか」をあらかじめ時系列で整理したもの。
郡山市のタイムラインでは、事細かに行動が示されている。例えば、阿武隈川の水位に応じて避難情報を発令。命の危険が差し迫るレベル5「緊急安全確保」が発令される前までに避難を完了を目指す。
タイムラインの第一人者でもある松尾一郎さんは「2020年の熊本県・球磨川の水害では、タイムラインを活用し200人が事前に避難した。実際にタイムラインが命を守った。作成して使い続ければ、必ず命を守る防災計画になる」と話す。
"起きてから"ではなく"起きる前"の行動が重要となる。