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密を避けプライバシー確保ができる「車中避難」しかしエコノミークラス症候群には注意!
災害から命を守る「避難」について考える。コロナ禍では、密になってしまいがちな避難所への避難の他に「分散避難」という考えも浸透してきた。その一つに「車中避難」があるが、気を付けたいポイントもある。
災害の種類に応じた避難所
代表的なものでは「指定緊急避難場所」というものがある。危険が差し迫った状況で、命の確保を目的に住民などが緊急に避難する施設や場所。また「指定避難所」は、避難した住民等が災害の危険性がなくなるまで、必要な期間滞在できる施設。
そして東日本大震災後に整備が強化された「津波避難ビル」は津波災害の発生時、高台までの避難に十分な時間が確保できない場合に緊急的に避難する場所。他にも障がい者や高齢者など、避難生活を送る上で一定の配慮が必要な人を受け入れる福祉施設などもある。
避難所だけが避難ではない
「避難」はタイミングだけでなく、種類や場所を把握しておくことが重要になる。東京大学大学院の客員教授で防災行動や危機管理の専門家・松尾一郎さんは「新型コロナ流行時から、分散避難が主流になった。私たちは災害によって、どんな避難をするかあらかじめ考えておくことが求められている」と話す。
自治体と民間企業がタッグ
「分散避難」について、福島県郡山市では民間企業と協定を結び避難のあり方の選択肢を増やしている。2019年の東日本台風で、郡山市の中心部では甚大な浸水被害が発生。多くの車が水没した。こうした被害を減らそうと、郡山市が2020年にパチンコ店のニラクと結んだのが災害協定だった。パチンコ店の駐車場と言えば「立体型」が一般的。より多くの車が駐車できるスペースがある場所だ。
9店舗で3230台分が避難可能
ニラクの谷口久徳代表取締役社長は「災害がいざ起きると、想像もつかないような現象、もしくは困りごとがあると思うので、郡山市と様々な形で相談しながら、さらに高めて対応していきたい」と話す。
災害が起きた時に郡山市内9つの店舗の駐車場で合わせて3230台分を車の避難場所として提供する。このうち郡山大町店の立体駐車場では、664台の車を停めることができ、より高い場所での安全を確保する。
車中避難も選択肢に
車での避難場所を整えることで、郡山市では「車中避難」を、避難のあり方の一つに加えている。車中避難は分散避難の一つで、感染症のまん延時に密を避けたり、プライバシーを確保できたりするメリットがある。
注意が必要な点も
一方で気を付けたいのが「エコノミークラス症候群」だ。十分な水分を取らずに長時間同じ姿勢で座るなどしていると、血流が悪くなり足の静脈に血の塊・血栓ができる。それが肺に到達して呼吸困難などを引き起こし、時には命を落とすこともある。対策には、足を上下に動かしたり、ふくらはぎを揉んだりするなど、血行を良くすることが大切。郡山市防災危機管理課の水澤基明課長は「同じ体勢でいると、足の血流が悪くなってエコノミークラス症候群が発症しやすい。こまめな水分補給と運動をお願いしたい」と注意を呼び掛ける。
熊本地震の教訓
2016年の熊本地震の際には、車中避難中にエコノミークラス症候群を発症する人が多かったという。防災マイスターの松尾一郎さんは「熊本地震ではエコノミークラス症候群で亡くなる人もいた。避難して2日目で発症している人もいる。エコノミークラス症候群は車の事例以外にも、普通の避難所でも起こり得る。避難所となる体育館の床は冷たい。冷たい床面に直接毛布を敷いて寝ると、血流が悪くなる。このような状況でもエコノミークラス症候群は発症する」と指摘する。また「車中避難では、避難所のトイレに行くのも面倒になり我慢をしてしまう。だから水も飲まない。それで血液がどろどろになって血栓が出来て亡くなった方もいた。寝床も冷たくない・寝返りがうてる・水も飲めてトイレに行けるそんな避難環境が望ましい」と話した。
車中避難 避難者へのケア
車での避難を受け入れるニラクでは、避難した人が快適に過ごせるように水道水の提供やトイレの利用も協定に含めている。また郡山大町店では、安全な避難行動につなげようと、横幅・約11mの大型ビジョンで市の避難情報を流せるようにした。
ニラク郡山大町店の穐元哲也ストアマネージャーは「郡山市内の全店で防災の意識を持ち、地域の皆さまに生かされているという感謝を常に考えながら、会社として取り組みたい」と話した。
車での避難は災害が起きる前に
車での避難は、浸水が起きてからでは危険だ。郡山市防災危機管理課の水澤課長は「事前に、自宅周辺の危険な場所の確認。あるいは避難場所の確認。避難場所への経路の確認・点検といったことを、普段からやっていただきたい」と話す。
郡山市では、民間企業の力を借りた「共助」で住民の命と財産を守る。