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田舎の暮らしが観光資源に 鮫川村に外国人観光客が集まるワケ
記者の視点で社会や地域の話題を紹介する「記者プレ」 今回、高野記者が注目したのは新型コロナが落ち着いて増加している「外国人観光客」
自動車や電車のルート案内を提供する「ナビタイムジャパン」が、アプリを使って新型コロナ流行前の2019年と2023年のそれぞれ1月から5月に観光で日本を訪れた外国人の数を調べた。人数の多い少ないではなく、何倍に増えたか自治体ごとの伸び率を出していて、伸び率は24.1倍で全国14位になったのが福島県鮫川村。鮫川村を訪れる外国人観光客がなぜ増えているのか?村で調べてみると外国人が求める新たな観光が見えてきた。
◆【動画で見る】伸び率全国14位 福島県鮫川村に外国人観光客が集まるワケ 自然や昔ながらの暮らしが観光資源に
見かけたことはない...!?
村民に外国人観光客を見かけたことがあるか聞いてみると「見かけたことない」との答え。食堂で聞いてみても「うちには、おいでになってないです」...スーパーでは「働いている方はいらっしゃいますけど、観光の方では...」という。鮫川村の村民10人に聞いたところ、皆さんが見かけていたのは技能実習や英語の指導助手として村内に住んでいる外国人。では、外国人観光客はどこを訪れているのか?
役場で聞いてみても...
鮫川村役場で聞いてみると...「村内にも観光地はあるんですけど、外国人が訪れてるって話とか情報っていうのは村の方にも入ってはいないんです」と、役場の観光係も「分からない」という回答。だったが...鮫川村商工観光係の生田目昌信係長から有力情報が。「自然体験・交流事業を、家族で行っている所があるんです。そちらに、確かイタリア人が働いてるって話を聞いたことがありますので、もしかしたら繋がる情報が聞けるかなと思います」
遊びを通して自然を学ぶ施設
教えてもらった場所に、早速向かった。「ぽんた山元気楽校」は、34年前に農作業や川遊びなどを通して自然を学んでもらおうと作った場所。子どもたちに交じってパン作りをしている外国人がいたが...イタリア人のトマゾさんは「ぽんた山」のスタッフだった。
里山体験をしにやって来る
「ぽんた山元気楽校」を作った、あぶくまエヌエスネットの進士徹さんに外国人の利用について伺うと「主に中国・ベトナムの学生・青年が多い」という。「ぽんた山」には、数年前から青森大学の留学生が里山体験をするために訪れていて、新型コロナが落ち着いてきた2022年度からは参加者が一年間に20人ほどへ増加。
他にも、2023年の夏にはドイツ人の親子が1週間滞在していたという。
進士徹さんは「うわべだけの体験じゃなくて、私たちが日常農作業やっているところに一緒に作業をしてもらう。人間が本来培ってきた、土に触れるという歴史のDNAみたいなものが掘り起こされるような感じ」だと話す。また「皆さん辛い作業ではあるんですけど、大勢いるとそれが楽しさに変わって『もっとやりたい』とか『大切なことに気づきました』っていう若い外国人が多い」という。
日本文化・農業を知るため移住
トマゾさんも学生時代に「ぽんた山」で里山生活を体験。日本の文化や農業を「もっと知りたい」と2023年にイタリア・ミラノから移住した。
「外国人は日本について大きな都市だけ分かります。東京・京都・大阪、でも田舎の生活はすごく面白い。だけど外国人はあまり分かりません。ここは外国人に田舎の生活と村の文化を教えます、学びます。外国人のためにもすごく面白い、すごく良いと思います」とトマゾさんはいう。
自然も暮らしも魅力的
住んでいる人にとっては「見慣れた景色」や「普通の生活」も、外国人にとっては"新鮮"そのもの。トマゾさんは、日本の里山体験の魅力をSNSなどで発信しながら、もっと多くの外国人観光客が鮫川村に来ることを期待している。
「ミラノの隣にも、田んぼはすごく多いけど全然違う。ここにいっぱい小さい田んぼがあります。すごく自然がある。ミラノの隣はあまり自然がない、だからここはもっともっといい、あと空気も綺麗、農作業は薬なしだからちょっと珍しい」とトマゾさんは話す。
里山環境を守る意識の変化に
あぶくまエヌエスネットの進士徹さんは「先人が培ってきた農山村の環境がしっかり未だにある。かといって、それが5年10年健全であるかといったら、高齢化・少子化っていう課題はどこの町村も同じだと思う。そういったところに、インバウンドで外国の方が訪れる、そこで"綺麗にしておかないといけないな"とか、行き届かないところは一緒に里山の環境整備をボランティアで手伝ってもらったりとか、そういった意義はたくさんあると思う。いつでも門は開いてますっていうような環境でいると、鮫川村もランキング14位じゃなくてベスト3の中に入っていくような予感はしています」と語った。
一つは、リピーターの増加
外国人がメジャーな観光地ではなく田舎を目指す理由を、ナビタイムジャパンの藤澤政志さんは2つ挙げる。
一つ目は「リピーターの増加」で、初めて日本を旅行した時には東京や京都・大阪などゴールデンルートと呼ばれる王道の観光地を巡るが、2回目・3回目となると「王道」とは違う場所を目指す人が多いという。
自国にない本質的な体験を求める
ナビタイムジャパン地域連携事業部の藤澤政志部長は「外国の方々は、まず自分の国の人がいない所を求める。その中で、自分たちが体験したいものって、本質的な体験なんです。例えば日本の作られた観光地ではなくて、生活なんです。日本の地域の生活をしてみたいとか、地域の人たちと交流をしてみたい、あとは農作業をしてみたい、こういった体験ができる場所っていうのをみなさん求めていると」という。
環境・文化などに配慮した観光
田舎を訪れるもう一つの理由に挙げたのが「サステナブルツーリズムの広がり」だ。「環境や文化・経済への影響に配慮した観光」という意味で、自然や文化・伝統に触れる体験型の観光を指す。
藤澤さんは、自治体だけではなく地域全体での受け入れが大切と話していた。
外国人の間で人気になって、魅力に気付かされるケースもある。身近な自然や、昔から続いている生活の一コマなど観光資源になるかも知れない。