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黒字でも倒産...いまや社会問題「後継者不足」 解決策に「第三者の事業承継」 常連客が受け継ぐケースも
記者の視点で社会や地域の話題を紹介する「記者プレ」 今回、丹野裕之記者が注目したのは、社会問題化している企業の後継者不足について。
民間調査会社「帝国データバンク」によると、2023年4月から9月までで全国で倒産した企業は4208件で、4年ぶりに4000件を超えた。特に顕著になっている課題が「後継者不足」。後継者難が理由での倒産は、過去最多の287件に上り、多くの企業で高齢化が進み後継者を選定出来ず、黒字でありながらも倒産に至っているケースも増えている。福島県内では、魅力ある事業を地域に残そうと新たなスタートを切った男性がいる。
◇【動画で見る】「後継者不足」解決策に「第三者の事業承継」 常連客が受け継ぐケースも
常連客が事業承継
郡山市にある一軒の画材店「マチエール美術堂」。店内には絵の具や筆などの画材2万点が並ぶ。30年以上続く画材店は、大きな転換点を迎えた。
現在この店を営む伊藤信也さんは、かつての常連客。2023年2月、年齢を理由に廃業を考えていた前のオーナーから、店の継承を持ちかけられた(サポートしたのが「福島県事業承継・引継ぎ支援センター」 )。
伊藤さんは「商売は初めてだったわけですよ。どちらかというと、人と接するのが得意な方ではないものですから、本当に私で出来るのかなっていう感じではありました。ただ、ここが無くなってしまう前提で前オーナーはお話されていたものですから、それは俺も困るなって正直思ったんですよ」と話す。
受けた優しさを絶やさない
59歳にして突然生まれた新たな道。自分に出来るのか?不安や葛藤が渦巻くなか、思い出したのは店に通い始めた30年前の光景だった。
会社員時代、残業帰りの伊藤さんを優しく包んだのが、美術堂が灯した明かりと店の雰囲気だった。
「包まれるような接客で、励みになったっていうか、温かく背中を押されているような気持ちになったなっていうのは覚えています」と伊藤さんは振り返る。
この灯を消さないために、店を引き継ぐことを決めた。
店に残るオーナーの愛情
オーナーとして店に立ち始めた伊藤さんは、発見の毎日を過ごしている。
「このお店に、どれだけ愛情かけていたかってことが分かる。あちこちに商品説明のメモが貼ってあって、お客さんに丁寧な説明が書かれている。そういうのを見ると、毎回教えられます」と伊藤さんはいう。美術堂に今でも残る前オーナーの優しさ。試行錯誤の毎日だが、変わらず多くのお客さんが店を訪れる。
利用客は「自分の息抜きみたいな来やすい場所。あるのが当たり前なので、無いとやっぱり寂しい。すごく私は重宝しているというか助かっている。新しい店主の方が来られて、本当に良かったなと思っている」と話す。
自分が客として受け取った優しさを、今度は自分が客へ伝えるように。2人のオーナーの色が交じり合った美術堂は、この場所で優しい明かりを灯している。
後継者不足を専門的に扱う企業も
大きな問題となっている「後継者不足」だが、課題解決に取り組む企業がある。東邦コンサルティングパートナーズは、2022年10月の設立以降、事業承継について多くの相談を受けている。
東邦コンサルティングパートナーズの矢吹光一社長は「1年間で事業承継の相談件数は、約1100件弱。事業承継やM&A事業譲渡で悩んでいるらっしゃる方がたくさんいる」と話す。
解決の一つに第三者への事業承継
矢吹社長は、後継者不足解決の一つとして「第三者への事業承継」を挙げる。「ご子息がいいっていうのが一番多い。ただ、どうしてもそういう方がいないとなると、第三者に対して承継。パートナーみたいな形で一緒にやっていきましょうというのが、近年地方では非常に増えている」と話す。
これは企業の存続だけでなく、視野を広げ新たな道を踏み出すきっかけになっているという。「新たな方と組むことによって、例えば業界をまたいで違った業界の方と、そこで掛け算が起こって新たな事業変革が起こっていくとか、次なる一手が打ちやすくなるとかという所があると思う」と矢吹社長は話した。
東邦コンサルティングパートナーズでは、後継者を探している人など事業承継について幅広く相談を受け付けている。