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犠牲となった命が変えた福島の未来 避難誘導中に殉職 避難者も警察官も...「津波から命を守る交通規制」

福島県内では5人の警察官が津波に飲まれて命を落とし、そのうちの1人はいまも見つかっていない。避難誘導中に命を落とした警察官もいたことから、2023年から見直された沿岸部の1つのルールに「津波から命を守る交通規制」がある。そこで警察が着目したのは、福島県浜通りを南北に走る国道6号線だ。
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未だ行方不明の同僚
双葉警察署・復興支援係長の高木保正警部補は、地域の見回りなどを通じて被災地に寄り添い復興を支えている。東日本大震災が発生した14年前も、高木警部補は双葉警察署で勤務していた。
署内に建てられた顕彰碑を見つめ高木警部補は「当時を思い出します。本当に残念、一生懸命やった結果なのでしょうけど、帰ってこないというのが本当に残念」と語る。
名前が刻まれた3人の警察官は、沿岸部で住民の避難誘導にあたり津波の犠牲になった。
当直体制で一緒になることが多かった同僚の行方は、まだ分かっていない。「どのような活動をすればいいのかを常日頃考えながら、準備しなくてはならないと考えている。二次被害に遭わないように、注意しながら活動しなくてはいけない。その辺も後輩に指導しながら活動していきたい」と高木警部補はいう。
見直された「災害時の交通規制」
東日本大震災で5人が殉職した福島県警察本部。県民の命を守りながら、避難を呼びかける側である警察官の命も守るために、2023年10月に見直されたのが災害時の交通規制だ。
津波被害を受けた震災直後の相馬市では、沿岸部に立ち入らないよう警察官が交差点に立ち交通を規制していた。
双葉警察署の佐久間正和署長は、当時相馬警察署の交通課長として指揮にあたっていた。「この場所で交通規制やっていいのかわからないまま、ただ危ないからここから先いけないですよと、現場のお巡りさんに任せていた」と震災直後をこう振り返る。
ポイントとなる国道6号線
そのような教訓から、交通規制のあり方について検討を重ねた福島県警察本部。注目したのが、東日本大震災の津波で浸水したエリアが国道6号線より海側に集中していたという点だ。そのため大津波警報が発令された際には、現場の警察官の判断に任せるのではなく、国道6号線から海側への通行は制度として規制することにした。
避難者と警察官の命を守る
旗振り役を担ったのが、2022年に県警察本部で交通規制課のトップだった、双葉警察署の佐久間署長だった。
佐久間署長は「二次被害を防止しつつ安全な所で交通規制をして、その安全な所から危険な所には一般車は入れない、避難者の方は余計な車が入ってこないから円滑に出られる。なおかつ警察官の二次被害を防止出来る。という規制のポイントを明らかにできたということは、国道6号線での規制は良かったのかなと思います」と話す。県民だけでなく警察官も守る。あの日が"いま"につながっている。
命を守る側の防災
警察庁によると、警察官の死者・行方不明者は30人にのぼっていて、多くは避難誘導や被害情報の収集に当たっている中で津波に巻き込まれたという。なかには、非番だったにもかかわらず駆け付けて巻き込まれたという警察官もいる。
「命を守る側」の防災を考えるうえで、あの日の対応を見直しルールを変えていくという取り組みはとても大切だ。
災害時はどうしても混乱してしまうことが想定されるが、警察官だけでなく私たち自身もこのルールを知る・守るということが大切になる。