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地権者の犠牲のもとにある中間貯蔵施設 除染廃棄物の処分はどこが担う?再利用すら進まぬ現状

「福島県外で2045年3月までに最終処分」が法律で定められている、原発事故後に除染で発生した土などの除染廃棄物。放射性物質の濃度が低い土は、全国の公共工事などで「再生利用」される方針で、福島県ではすでに飯舘村の農地などで実証事業が行われている。しかし、県外の実証事業は埼玉県所沢市などで計画されるも、地元の反対によって実現していない。そうした中で、双葉町・伊澤町長が「町内での再生利用に前向きな考え」を示し、いま波紋を広げている。再生利用への理解は進むのか?
約束があったから判を押した
福島県大熊町の松永秀篤さんは、震災前に生活していた熊川地区の土地を国に提供した。「2045年までに県外最終処分という約束というか担保があったから、自分らも判を押したのであって、そこはきちっと守ってほしい」と松永さんはいう。
そのために欠かせない除染で出た土の再生利用が、進まない背景には説明不足があると考えている。
「利用してもらうのにも、どこかの自治体、県外で。説明が足りないというか、自分たちに分かるように説明の仕方をしてくれれば、もっと違うのかな」
地元の意思 時期尚早では
そうしたなか、双葉町の伊澤町長が個人的な意見として「町のインフラ整備で必要になったタイミングで住民・議会の理解を得て町内での再生利用を考えていきたい」と、町内での再生利用に前向きな考えを示したことについては、「最終処分場にはしないという約束だったから、再利用となると別だと思うけど、やっぱり地元から出すような言葉ではなかったのかな。もう少し時間を置いてから出してもらえればな」と松永さんは話した。
県民の意見も分かれる
除染で出た土の福島県内での再生利用について、福島県民の意見は割れている。福島テレビと福島民報社が行った電話による世論調査で、「賛成」は37%「反対」は35.2%で拮抗した形となり「わからない」も27.8%を占めた。
双葉町の町民からは「運び出す場所も決まってない。そんな状況の中で30年のうちの3分の1の10年も過ぎた。この問題は地元だけではない、日本全国で考えてもらえれば。やはり反対・賛成の二者択一の議論ではどうにもならない」と全国的な議論を求める声が聞かれた。
一方、事業を所管する環境省の浅尾大臣は、さらなる理解醸成を進める考えを強調した上で「大変量が多いものでありますから、できるだけ県外・全国で再生利用ができるようにしていかないと、最終処分の量が減容されないという課題があります」と語った。
専門家の視点
再生利用に対する理解は進むのか?震災や原発事故を研究する東京大学大学院総合防災情報研究センターの関谷教授はその行方に注目している。
「単純に福島だけの問題ではなくて、再生利用ができなければ最終処分もできないですし、例えば核燃料廃棄物の問題や原子力のバックエンドの問題、これも今後絶対にうまくいくはずがないと思う。今後の日本の原子力の進むべき方向性を示す試金石でもある」
そして、これまでの研究から見えてきたある傾向を指摘した。
「普通の食品の安全性の問題も処理水の問題もそうだが、だいたい研究していて福島県民の認知率の約半分が県外の人の認知率。福島県民の理解があるからこそ、はじめて全国民・世論の喚起というか、この問題に関する意見の醸成ができてくるものだと思う」
福島県外との温度差
2045年3月までの「福島県外最終処分」に向けては、多くの人に中間貯蔵施設の存在を知ってもらうことが大切になる。
環境省が2024年12月に行ったアンケート調査では、2045年3月までの県外最終処分について「知っていた」と答えた人は福島県で約55%、県外では約25%にとどまった。この傾向は、一年前とほとんど変化がなく、震災の風化もあるように思うが県内と県外では温度差がある。
東京などで計画されていた除染で出た土の再利用は、地域住民の反発などで頓挫している。原発事故で故郷を追われた人からは、事故を起こした原発の電力を使っていた東京など首都圏の人は「もっと当事者意識を持ってほしい」という声をよく聞く。
福島だけでなく「首都圏・全国の問題」だと捉えてもらうようにしなくてはならない。