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未曾有の原子力災害を経験した福島の教訓は? 原発か再エネか 東日本大震災から14年で揺らぐ理念

2011年の原発事故後、福島県内で急速に拡大したメガソーラー。いま各地で"あつれき"が浮き彫りになり"逆風"が強まっている。そうしたなか、政府は震災後の政策を転換、打ち出したのは「原発の最大限の活用」だ。原発から再生可能エネルギーへ、震災後に掲げられた理念がいま揺らいでいる。

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帰還困難区域のメガソーラー

福島県浪江町の帰還困難区域。立ち入りを制限するフェンスの向こうに、メガソーラー「浪江酒井第一・第二太陽光発電所」が広がっている。
浪江町産業振興課の藤坂浩暉さんは「土地の活用の方法の1つとして、住民の皆さま農地所有者と地元の方々の合意のうえで、こちらの太陽光が設置されています」と説明する。
原発事故前は田んぼだった70ヘクタールに、敷き詰められた18万枚の太陽光パネル。生み出された一般家庭1万6700世帯分の電力は、すべて東京電力に売電される。
郡山市に設立された合同会社が手掛け、2020年2月に運用が始まった。
浪江町産業振興課の藤坂さんは「原子力や化石燃料からの脱却という点で、非常に大きな役割を果たしている。浪江町のなかで消費できていないのは、解決すべき課題だと考えている」と話した。

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原発から再生可能エネルギーへ

原発事故後、福島県内で急速に拡大したメガソーラー。福島県が目指したのは、再生可能エネルギーの"先駆けの地"だ。
具体的な道筋を描いたのが、専門家を中心とした「再生可能エネルギー導入推進連絡会」だった。原発事故から1年が経った2012年4月に発表された「推進ビジョン」では、大きな目標が初めて示された。
「2040年頃までに県内のエネルギー需要に対して、100%の再生可能エネルギーを導入する」
震災前から座長を務める九州大学・エネルギー研究教育機構の東之弘教授は「正直、できる可能性の方がとんでもなく低かったと思う。だから、あくまで努力してやろう。ただ、すごく重要なのは、あの当時この数字を無理だっていう人はあまりいなくて、これをやるしかないというのが、福島県のある程度の皆さんのスタンスだった」と振り返る。

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原発の安全神話の崩壊 当時の知事は

福島県の浜通りを中心とした12市町村に避難指示が出され、最大で16万人が県内外に避難した原発事故は未曾有の災害だ。
陣頭指揮を執ったのが、2014年までの2期8年に渡り福島県を率いた佐藤雄平元知事だ。
福島第一原子力発電所が深刻な状況に陥るなか、正確な情報提供と事態の早期収束を訴え続けた。
東京電力が、事故を起こした福島第一原発の1号機から4号機の廃炉を表明した時には「この事態を一刻も早く全てをかけて収束させること。それに尽きる。すべてをかけて収束させること。このような大事態になって、私自身は、国はエネルギー政策を見直していかないといけないと思う。これについては、私自身はこれから国に進言していこうと思っている」と発言していた。
安全神話が崩れた原発への怒りを強く滲ませた上で、示したのは福島県として"脱原発"を目指す姿勢だ。
佐藤雄平元知事は「私として脱原発は当然だけれども、国民もあんなに大変なことなのと福島の現状をよくわかっていから、多少辛抱しても脱原発だろうという、ある程度のコンセンサスはできたような感じ」と話す。

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再エネ導入へ大きく動く

事故の5ヵ月後には、「原子力に依存しない社会づくり」を掲げた「復興ビジョン」を策定し、再生可能エネルギーの導入に舵を大きく切った。
そして、2023年度には、目標を3年前倒し福島県内の再生可能エネルギーの導入量が県内の消費電力に対して初めて100%を超えた。専門家も当時無理だと思った目標に近付いている。

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ノー・モア・メガソーラー

しかし、メガソーラーは県内各地で"あつれき"を生んでいる。特に、景観の悪化が問題視されているのが福島市の先達山で進むメガソーラーの建設計画だ。
福島県内では規制強化の動きもあり、福島県が2025年4月から踏み切ることになったのが、行政指導を受けた事業者名の公表などの新たな対策だ。メガソーラーの建設をめぐり県内で2024年に確認された違反行為は12件に上り、後を絶たない不適切な開発の抑制を目指す。

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脱炭素へ 原発を最大限活用

メガソーラーへの"逆風"が県内で強まる一方で、政府は2025年2月に新たな「エネルギー基本計画」を閣議決定した。脱炭素社会の実現のため打ち出したのは、原発と再生可能エネルギーの「最大限の活用」だった。
武藤経済産業相は会見で「原子力に対しても、特に立地県もそうですけれども、皆さんの御懸念があるのもこれも事実だと受け止めて、しっかりと皆さんの不安を払拭できるように、そして、なぜ原子力が必要なのかという点も含めて、今後も丁寧に説明を加えていきたい」と発言している。原発事故の教訓だった「可能な限り原発の依存度を低減する」という文言は新しい基本計画からは削除された。

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私たちの事故の経験は?

 "廃炉の最難関"とされる燃料デブリの取り出し。2024年11月に、初めて敷地の外に運ばれた燃料デブリの量はわずか0.7グラム。880トンと推計される全体の取り出し方法は定まらず、廃炉完了の画姿がいまだ描けない中での"原発回帰"だ。
佐藤雄平元知事は「原発回帰は私としては容認できない。福島の原発事故をちゃんと顧みなさいよと。原発に戻るわけないじゃない、福島が率先して自然エネルギーで立県している県だと、豊かな県だと1つの模範に示さなきゃいけないね。だから原発県だからこそ、東京電力が原子力発電所で事故を起こした県だからこそ、自然エネルギーの県」と語った。
原発から再生可能エネルギーへ。ターニングポイントとなった"あの日"から14年が経った。

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