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福島・猪苗代湖 船舶の航行区域を規制 子ども含む3人死傷の事故を受け 遺族は「4年経ちようやく」

福島県が誇る観光地・猪苗代湖。夏は湖水浴、そしてマリンスポーツを楽しむ人で賑わうが、一方で事故は後を絶たない。命を守るために、法律に基づきすべての船舶を対象に航行区域の規制が2024年7月1日から始まった。

<8歳男児が死亡する事故>
猪苗代湖・中田浜の沖合に浮かべられたブイ。そして、ボートなどの航行区域を示す看板。いずれも命を守るために新たに設けられた。
2020年9月、猪苗代湖で起きた事故。航行するボートに3人が巻き込まれ、当時8歳の豊田瑛大君が死亡した。
この事故を受けて、福島県などの協議会は再発防止策を検討。これまで、自主的なルールに基づいていたモーターボートなどの航行エリアを、法律で規制すること決めた。
規制では、モーターボートなどすべての船舶を対象に、岸から300メートルの範囲を基本に航行を禁止に。違反した場合は30万円以下の罰金が科せられる。

<後を絶たない事故>
猪苗代湖では瑛大君が亡くなった事故の後も、毎年のように船や水上バイクが絡む事故が相次いでいて、この5年では26件22人がケガをしている。
ボートなどを貸し出す側も、新たに設けられた航行区域によって事故の防止を期待し、利用者にルールブックを配布して周知することにしている。
磐梯マリーンの秦郁子常務は「現在も、お客様からの問い合わせが結構多い。そういったところも含めて、しっかり事故・ケガのないようにマリンスポーツを楽しんでいただけるよう、安全啓発をしていきたい」と話した。
県などでは今後、湖面上からも航行区域が判断できるよう浜辺に看板を設置することを検討している。

<法律に基づいた規制に>
これまでも福島県などの協議会がモーターボートなどの航行禁止区域を設定していたが、あくまでも各浜の自主ルールで、罰則はなかった。
これを河川法に基づいて、モーターボートだけでなく手漕ぎのボートを含むすべての船舶を対象に航行できるエリア、出来ないエリアを定めたこと、さらにルールを守らなかった違反者に30万円以下の罰金を科す点が大きな違い。

<規制対象は25の浜>
河川法の規制対象となったのは、猪苗代湖にある25の浜。モーターボートなどの航行禁止エリア、手漕ぎボートなどの航行禁止エリア、協議会が定めた自主ルールエリアがある。
自主ルールエリアでは、岸から300メートルの範囲で水質調査などの船を除き航行を禁止している。
このうち2020年に事故が起きた中田浜の場合、河川法の規制エリアと自主ルールでの利用禁止エリアが細かく設定され、ブイで設置して分けている。

<周知・浸透が重要に>
2020年の事故で亡くなった豊田瑛大くんの父親は、ホームページ上で掲載されていた誤った区域分けの地図を見て、事故に遭ったという。
なぜ誤った地図が掲載されていたか経緯は分かっていないが、調査を行った国の運輸安全委員会は正しい区域分けやルールの周知徹底がなされていなかったことも事故原因の一つに挙げている。
二度と事故を繰り返さないためにも、設定された航行区域を訪れる人に正しく伝え、認識してもらうことが大切になる。

事故で亡くなった瑛大くんの両親は「二度と同じような事件が起きないようにするために、規制やパトロールの強化は当然のことだと思っています。ただすでに事件から4年も経っており、ようやくという思いもあります」とコメントしている。
福島県は今回のルールを運用し、問題があれば都度修正していくとしている。