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福島・西郷村の盛土に初の行政代執行 工事着手に住民は安堵 他にもある盛土 全県で規制へ     

災害の防止と住民の不安解消へ。福島県西郷村で問題となっていた盛り土・盛土を巡り、県が規制法に基づく初の行政代執行に着手した。

<行政代執行に着手>
西郷村真船地区、8月28日午前10時。
「盛土規制法第20条第5項に規定に基づき、行政代執行を開始いたします」
28日西郷村真船地区で着手された工事。盛土規制法に基づく福島県内初の行政代執行だ。

<住民から不安の声>
2023年12月。土砂のすぐ目の前に自宅がある女性は「いつ崩れてくるか分からないでしょう。この間も雨降ったのね、そしたら(自宅の方に)土が流れてきて石がゴロゴロ流れてきて、心配だよね」と話していた。
住民から不安の声があがったのは、2023年7月。「亀裂が入っている」「心配で夜も眠れない」
県外の事業者が運び込み、住宅脇に盛られた土砂は、いつしか危険を感じるまでうず高く盛られた。最も高いところで22メートルに達する。

<行政が規制に乗り出す>
西郷村は2023年、盛り土などを規制する独自の条例を制定。その後。福島県は危険な盛土が確認された西郷村と矢祭町を先行的に規正法の対象に指定した。
2024年6月には「土砂の流出など災害の危険性がある」として、盛土を造成した埼玉県の男性2人に改善命令を出したが、その後も改善は見られず、「災害防止の措置を講ずる見込み」がないと判断。
県は男性2人に代わり盛土の一部を撤去する「行政代執行」を決め、その経費として2億5500万円の補正予算を専決処分した。

<工事着手に住民も安堵>
川谷行政区長は「近くに民家ありますので、その方も雨のたびに心配して避難したりしていたので、これでちゃんと整えば、一安心できますよね」と話す。

工事の計画では、約3分の1の土砂を撤去。現在、高さ22メートル、最大で48度の勾配がある盛り土を、3段に整備した上で、高さ15メール、勾配を30度まで抑えることしている。
福島県都市計画課・櫻澤一朝副課長は「9月、10月は豪雨が多いですから、そういった時期も見据えて、この時期の着手をしたものですから、この盛り土が崩れて危険な状態にならないように、対策を万全にして工事を行って行きたい」と話した。

盛土規制法による県内初の行政代執行。工事は2025年3月19日まで続けられる予定だ。

<郡山支社・浅野記者解説>
工事は午前10時から始まり先ほど午後4時まで行われた。重機で盛土の土砂を集め、トラックで運びだす作業が何度も繰り返された。
ただ雨脚が強まると作業を中断し、盛土が崩れ落ちないよう安全に慎重に作業を行っていた印象を受けた。

不安を募らせていた住民からはひとまず安堵の声が聞かれた。
地区の住民の一人、児山美智子さん(65)は盛土の近くに住宅があり、これまで大雨が降った時などは土砂崩れを警戒し村営住宅に避難してきた。
児山さんは「やっと始まってくれたんだなって思います。これが少しでも低くなるんであれば、危険が少しでも回避されるんであれば、ていうところですかね。(ただ)これから台風シーズンに入っていきますので、雨でここまできたので崩れることはないよっていう時まではやっぱり心配ですかね」と話していた。

<ほかにもある盛土>
◇福島県内にある他の盛土への対応は?
今回行政代執行が行われた盛土の他に、西郷村と矢祭町でそれぞれ2ヵ所、また白河市で1カ所ある。
なかでも福島県が今後の動向を注視している盛土が2つある。
その一つが西郷村真船地区にある今回代執行が行われた盛土とは別の盛土で、2024年6月に茨城県の業者が森林法違反の罪で起訴されている。
また、この業者が関わった矢祭町山下地区の盛土についても、県は今後改善命令を出すかどうか検討するとしている。

◇今回の行政代執行の経費は2億5千万円余りで税金が原資だ。他の代執行では、対象者に請求しても回収できなかったケースもあるというが、今回は?
支払いの見通しについては現時点ではわからない。ただ、県の担当者は請求の対応も含めてしっかり行うとしている。
また、この現場は近くに住宅などがあるので、なによりも人命を優先した判断と言えそうだ。

◇今後同様の盛土が造成され、行政代執行が繰り返されることはないか?
県は盛土について、中核市を除いた全ての市町村で、2024年9月末までに対象区域を指定して規制開始をする方針だ。これにより、今後区域内で基準に合わない盛土は規制され、違反した場合、法人には3億円以下の罰金などが科される。
また、県は盛土の監視を専門に行う職員を各地に配置し、抑止につなげる方針だ。

まずは代執行による工事が無事に完了することを望む。