詩人・谷川俊太郎さん死去 被災地の校歌を作詞 子どもたちの成長と復興を"ことば"で見守る【福島発】
11月13日に日本を代表する詩人の谷川俊太郎さん(92)が亡くなった。
イベントなどで福島県に何度も訪れ、東日本大震災後は原発事故で被災した浜通りで再出発した学校の校歌を作詞。"言葉の力"で子どもたちの成長と復興を見守っていた。
<ゆかりの学校からも追悼>
2023年4月に開校した福島県大熊町の認定こども園と義務教育学校「学び舎ゆめの森」。この学校の校歌は谷川さんが作詞した。
11月19日には、谷川俊太郎さんを追悼するコーナーを設置。約2万冊の本を揃える「本の広場」には、谷川さんのコーナーもある。
《校歌 学び舎ゆめの森のうた》
♪ひとりっていいなルンルンルン
みんなもいいなグングングン
ひとりもいいけど でもやっぱりみんなといっしょがいいな
学び舎ゆめの森・南郷市兵校長は「『1人もいいけど、でもやっぱりみんなと一緒がいいな』とか、『好きなものは違うけど、嫌いなものも違うけど』とか、自分を大切にして、仲間のこと周りの人のことも愛して、豊かに生きていくっていう思いが詩に歌われています」と話す。
作曲は長男の賢作さん。子どもたちが口ずさみ、町を代表する歌の一つになっている。
<生きる道しるべに>
増子啓信副校長は「緩やかな協働性という、みんな一斉にやらなくてもいい、それぞれの得意なことをその特性を進めていく。そこに人の力を借りたり貸したり、そういうことができたらいいなということが、歌詞に現れていると思います」と話す。
南郷校長は「子どもたちにとって『生きる道しるべ』になるような、とても素敵な詩をいただいております。きっとこれから進むべき道が、この歌の詩の中から、子どもたちの背中をそっと押してくれると思う、そんな気がしています」と語った。
<未来を照らす歌詞>
一方、高校が2015年4月に開校した、双葉郡の復興の象徴「ふたば未来学園」。この校歌を作詞したのも谷川さんだった。
ふたば未来学園中学校・高等学校の郡司完校長は「1番は『学び』について。2番は『多様性』について。3番は『故郷』について書かれています」という。
《ふたば未来学園 校歌》
♪学ぶ覚える身につける
腑に落ちるまで考える
郡司校長は「教育活動の中核には、探究活動というものを据えていて、1番の歌詞にある『腑に落ちるまで考える』というフレーズは本校にふさわしい内容であると、初めて聞いたときに感じた」と話す。
<生徒たちにも伝わる思い>
谷川さんらしい深遠な世界観の歌詞が、浜通りの生徒たちの未来を照らしている。
生徒たちは「かたくない、本当に新しい私たちを表しているような歌詞。新しい形で、私たちの行く先や未来を想像してくれている歌詞だと思う」「故郷から世界に向かっていくといった意味が込められている歌詞だと思う。谷川俊太郎さんが思い描くふたば未来学園生となれるように、頑張っていきたい」と話した。
<福島を代表する詩人とのつながり>
そして、今から36年前の11月。東京で執り行われた福島県いわき市出身の詩人・草野心平さんのお別れ会。この時「カエルの詩人」の功績を称え、谷川さんはこのような別れの詩を贈っていた。
「ありがとう心平さん、笑顔をありがとう、声ありがとう。僕もいつか死んだら死んだで生きていきます。1988年11月28日、谷川俊太郎」