テレビ番組テレポートプラス
台風19号 "ダムの緊急放流"
災害が起きる前に私たちにできることを考えるシリーズ防災大百科。
今回は台風19号と豪雨で注目されたダムの役割について
福テレ・防災担当の井上明記者と話を進める。
【ダムの目的とは?】
大きく分けて「治水」と「利水」の2つに分けられる。
「治水」上流で降った雨を貯め込み下流に流れる量を調整し洪水を防ぐことを目的
「利水」農業や水道などで使う水を安定的に供給するため一定の水を貯めることを目的
つまり、台風などの大雨の際に本来の役割を発揮することが期待されているのは「治水」ダムとなる。
【福島県内のダムでも浸水被害の軽減に結びついたケースが】
「阿武隈川」の支流に整備され、治水機能を備えた「三春ダム」
台風19号の際に行われたのが、「防災操作」と呼ばれる洪水調節。
<台風19号が接近した当時の総雨量はおよそ300ミリ>
三春ダムでは大量に入ってきた水を下流には流さないでダムに貯め込む対応を取った。
その結果、水位はダムに貯められる高さまであと4メートルに迫る過去最高の329メートルに達したが、
下流の河川の水位の上昇を抑えることができた。
郡山市の阿武隈川では水位を84センチ下げるなど浸水被害の軽減につながったと試算されている。
<防災マイスターの松尾一郎さんも防災操作の必要性を指摘>
「水が超えることによって、堤防は土ですから崩れて決壊に至ることはあるので、
なるべくなら水位が高い状態は短ければ短い方がいい。
防災操作はその効果(決壊を防いだ)もあったと思います」
【台風19号や豪雨の際に注目されたのがダムの「緊急放流」】
「緊急放流」とは大雨で貯水量が急増したダムの決壊を防ぐため、通常よりも大量の水を流すことをいう。
ダムの下流では浸水被害の危険が高まることから緊急時の「最終手段」とされている。
【福島・南相馬市の「高の倉ダム」では2019年10月に2回行われた】
「高の倉ダム」は農業用に作られた「利水」ダムのため、
三春ダムのような洪水を防ぐことを想定した設備にはなっていない。
取材を進めると「緊急放流」に対する住民の不信感や「利水ダム」の運用の難しさが見えてきた。
10月25日の大雨で貯水量が急増した南相馬市「高の倉ダム」
ダムの決壊を防ぐため、台風19号に続いて2回目の「緊急放流」を行った。
いずれも下流の河川が氾濫した。
高倉地区ではおよそ70世帯のうち10世帯が床上浸水の被害にあい、
「高の倉ダム」の対応に疑問を感じている。
ダムの貯水量を事前に下げておくことはできなかったのか?
南相馬市経済部末永孝雄さん:「あくまでも利水ダムなので、そういった洪水調整のダムではない。
構造的にもそういった調整ができるダムじゃないんで、事前の調整が難しいダムになります」
県が定めたルールで「常に満水」が求められていることも貯水量を調整できなかった理由だという。
さらに住民が不信感を募らせているのが情報周知の遅れ。
ダムから数百メートルの住宅はとくに被害が大きく、目の前の橋は流され
いまだ復旧の見込みは立っていない。
小野さん夫妻は間一髪避難して無事だったが、
「緊急放流」を知ったのは開始から1時間以上経ってから。
緊急時のダムの対応が万全にならない限り、住民の不安は尽きない。