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1時間160ミリの豪雨を体験!会話も聞こえない状況 実験が教える避難のベストタイミング【福島発】

近年、日本各地で大雨による災害が頻発している。天気予報で「1時間あたり40ミリの激しい雨」といった表現を耳にすることも多いだろう。しかし、これらの数字が実際にどれほどの危険を意味するのか、具体的にイメージできる人は少ないのではないだろうか。

<雨の強さを知る 気象庁の基準>
気象庁は雨の強さを1時間雨量(mm)に基づいて分類している。
・10〜20mm未満:やや強い雨
・20〜30mm未満:強い雨
・30〜50mm未満:激しい雨
・50〜80mm未満:非常に激しい雨
・80mm以上:猛烈な雨

しかし、これらの数字だけでは実際の危険性を実感するのは難しい。そこで、福島県南相馬市にある「福島ロボットテストフィールド」で、実際の雨を再現する実験を行った。ここには、1時間雨量180ミリまで降らせることができる試験室がある。

<1時間雨量80ミリの猛烈な雨>
まず、1時間雨量80ミリの「猛烈な雨」を体験した。この雨量は、2023年9月にいわき市を襲った線状降水帯による豪雨に匹敵する。
実験では、傘を差しても体が濡れてしまうほどの雨量だった。さらに、雨音が激しく、会話が困難になるほどだ。これだけでも、夜間や暗い場所での避難を想定すると、身の危険を感じる強さだと言える。

<いわき市の実際の降雨データ>
2023年9月8日のいわき市の降雨データを詳しく見てみると、午後5時から11時までの間で最大1時間雨量は71ミリだった。しかし、これは1時間単位での平均値に過ぎない。
10分間ごとの記録を見ると、午後7時50分に26.5ミリを観測している。これを1時間に換算すると約160ミリとなり、瞬間的にはさらに強い雨がいわき市を襲ったことがわかる。

<1時間雨量160ミリの再現実験>
そこで、1時間雨量160ミリの雨を再現してみた。この雨量は、まさに「滝のような雨」と表現するにふさわしい。傘を差していても、水の重みで傘が揺れ、まともに持つことすら困難だ。さらに、雨音が激しすぎて会話が全く成立しない。これでは避難中の声かけも難しく、危険が増す一方だ。

<風を加えた過酷な状況>
さらに、この160ミリの雨に風速10メートルの風を加えた状況も再現した。すると、傘は完全に役立たずとなり、前方の視界も失われてしまう。これは、身の危険を感じるレベルが一気に上がる状況だ。

<早期避難の重要性>
今回の実験を通じて、「激しい雨」と呼ばれる程度からすでに危険を感じ始めることがわかった。さらに、道路の冠水などにより身動きが取れなくなる可能性も高くなる。
つまり、大雨が予想される場合は、雨が本格的に降り出す前に避難を開始することが極めて重要だ。天気予報で「1時間に〇〇ミリの雨」という表現を耳にしたら、その数字が持つ意味を十分に理解し、早めの行動を心がけよう。自分の命を守るためには、「様子見」は禁物だ。

【実験に協力いただいた福島ロボットテストフィールドとは】
2020年に全面開所した、ロボット開発などのための実験環境を提供する施設。
物流環境改善のためのドローンによる牛丼の輸送といったユニークな実験のほか、警察による大規模な救助訓練のフィールドとしても使用されている。