<福島第一原発>取り出したデブリは約0.7グラム 4つの研究機関で分け合えるギリギリか
福島第一原子力発電所2号機で、11月7日に試験的取り出しが完了した燃料デブリについて、東京電力は11月8日までに、密閉された装置の中で重さや水素濃度を測定した。
重さは約0.7グラムで水素は検出限界値未満だったという。
水素濃度が4%となると燃焼や爆発の恐れが出てくるため輸送にあたっての時間制限などが心配されていたが、この結果により、敷地外に搬出・輸送できる基準を満たしていることが確認された。
今後、燃料デブリは茨城県にある日本原子力研究開発機構の研究施設に運ばれて分析が行われることになるが、この施設も含めて4つの研究施設での分析が予定されている。
当初、1施設あたり約0.2グラムを分け合って分析することを想定していたが、取り出したデブリは0.7グラムだったため、分配の仕方については今後の検討としている。
また、放射線量については既に5日に、20センチの距離で1時間あたり約0.2ミリシーベルトと、今後の作業を行える基準の上限の120分の1だったことを確認している。
第一原発には、事故で溶け落ちた核燃料が金属やコンクリートなどを巻き込んで固まった「燃料デブリ」が約880トンあると推計されている。
この取り扱いは廃炉の「最難関」とされ、当初2021年中に実施される予定だった「燃料デブリの試験的取り出し」は、ロボットの制作遅れや変更などで延期されていた。
取り出しの準備が整い、2024年8月22日に着手されるはずだったが、「ロボットを押し込むための棒の順番が間違ったまま準備されていた」というミスにより取りやめ。
9月10日に再開されたものの、カメラの不具合で9月17日に中断。
カメラを同じタイプの別のものに交換し、10月28日に作業が再開されていた。
【これまでの経緯】
■2021年:当初の試験的取り出し着手予定
⇒ロボットの開発遅れ、経路への堆積物の詰まり発覚などで延期
■2024年8月22日:試験的取り出し着手を計画するも「現場での棒の順番ミス」が発覚し取りやめ
⇒東京電力が現場に立ち会っていなかったことなどが問題に。
管理体制の見直しを行う。
■2024年9月10日:試験的取り出し作業に着手
■2024年9月14日:ロボットが一度デブリをつかむ
■2024年9月17日:カメラ4台のうち2台の映像が見られなくなるトラブルで中断
⇒高い放射線が影響でカメラ内部に電気がたまり不具合を起こしたと推定。
カメラ交換を決断。
■2024年10月24日:カメラの交換作業を完了
■2024年10月28日:試験的取り出し再開
■2024年10月30日:デブリの把持・吊り上げに成功
■2024年11月2日:デブリを事故後初めて格納容器外へ取り出し成功
■2024年11月5日:放射線量が「取り出し」基準クリアを確認
■2024年11月7日:試験的取り出し作業完了
■2024年11月8日:デブリの水素濃度などが輸送の基準を満たすこと確認