【"燃料デブリ取り出し"のギモン】2号機以外はどうなった?<福島第一原発>
福島第一原子力発電所2号機では、11月7日に、事故で溶け落ちた核燃料=燃料デブリの試験的取り出しが完了し、11月12日に事故後初めてデブリが原発構外へ輸送された。
デブリが運び込まれたのは日本原子力研究開発機構(JAEA)の大洗原子力工学研究所。JAEAは11月13日、画像のように燃料デブリを輸送容器から取り出したと公表した。
デブリの重さは0.7グラム、放射線量はデブリから20センチの距離で1時間あたり0.2ミリシーベルト。
燃料デブリは第一原発での高い放射線の「発信源」となっていて、廃炉作業の大きな障壁となっているほか、これに触れた雨水や地下水が汚染水となって、大部分の放射性物質を取り除く処理をして「処理水」としてから海洋放出されている。
【1号機と3号機は取り出さないの?】
2011年の事故で1号機と3号機は水素爆発を起こした一方、2号機は原子炉建屋の側面パネルが1号機の水素爆発の衝撃で開いたことで爆発を回避した。
福島第一原発の1号機から3号機までには事故で溶け落ちた核燃料=燃料デブリがあわせて880トンあると推計されているが、東京電力は「現場の放射線線量が比較的低く、早期に原子炉格納容器内部にアクセス可能」などの状況から、まずは2号機での試験的取り出しに着手することを決定した。
【1号機はどうなっているの?】
1号機は水素爆発によりガレキが飛散している状態であるため、原子炉建屋全体を覆う大型カバーを設置し、まずはその中でガレキ撤去を行う計画が進行中。
燃料デブリへの接触に向けては、格納容器の内部調査を実施している段階で、2024年2月から3月にかけて、格納容器内部にドローンを入れて調査を行い、初めて「気中で」「デブリとみられるもの」を確認したという状況。
今後も内部調査を行い、デブリへの接触方法を検討する。
【3号機はどうなっているの?】
福島第一原子力発電所3号機では、燃料デブリの「大規模取り出し」が計画されている。
気中で水をかけながら取り出す方法や、建屋を水で満たしてから取り出す方法などが検討されていたが、廃炉作業への助言を行う「原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)」は「原子炉内のデブリの一部をセメントのような充填剤で固め、気中で取り出す」という方法の採用を決定していた。
この決定をもとに、東京電力が具体的なスケジュールや予算規模などの検討を行っているところで、東京電力はNDFからの聞き取りに対し「2025年度半ばまでに検討を完了したい」としているという。
東京電力の検討については、NDFも進捗の確認や必要に応じた助言などのフォローアップを行うとしている。
事故から約13年8か月で、ようやく0.7グラムのデブリの取り出しに成功した福島第一原発。
国と東京電力が掲げる「2051年までの廃炉完了」に向け、残る880トンのデブリの扱いや、1号機から3号機までの廃炉の姿とそこまでの道筋を示すことが求められる。
【これまでの2号機試験的取り出しの経緯】
■2021年:当初の試験的取り出し着手予定
⇒ロボットの開発遅れ、経路への堆積物の詰まり発覚などで延期
■2024年8月22日:試験的取り出し着手を計画するも「現場での棒の順番ミス」が発覚し取りやめ
⇒東京電力が現場に立ち会っていなかったことなどが問題に。
管理体制の見直しを行う。
■2024年9月10日:試験的取り出し作業に着手
■2024年9月14日:ロボットが一度デブリをつかむ
■2024年9月17日:カメラ4台のうち2台の映像が見られなくなるトラブルで中断
⇒高い放射線が影響でカメラ内部に電気がたまり不具合を起こしたと推定。
カメラ交換を決断。
■2024年10月24日:カメラの交換作業を完了
■2024年10月28日:試験的取り出し再開
■2024年10月30日:デブリの把持・吊り上げに成功
■2024年11月2日:デブリを事故後初めて格納容器外へ取り出し成功
■2024年11月5日:放射線量が「取り出し」基準クリアを確認
■2024年11月7日:試験的取り出し作業完了
■2024年11月8日:デブリの水素濃度などが輸送の基準を満たすこと確認
■2024年11月12日:事故後初めてデブリを第一原発構外へ 研究施設へ輸送