原発事故から14年 福島第一原発のいま 廃炉・燃料デブリ取り出し加速へ 残る課題と増える問題
福島第一原子力発電所の廃炉をめぐる課題。2024年、事故後初めて第一原発から取り出された燃料デブリの実物大の模型。この0.7グラムを取り出すのに約14年がかかったわけだが、第一原発の構内には880トンもの燃料デブリが残されていて、いまだ廃炉の「道が見えた」とは言えない。
■東京電力社長が「福島への責任」強調
「14年前のきょう、この福島第一原子力発電所で起こしてはならない事故を起こしてしまいました」東京電力の小早川社長は3月11日、福島第一原発を訪問。震災の犠牲者への黙とうを捧げ改めて「福島への責任」を強調した。
小早川社長は「福島の責任を果たすことは一丁目一番地ですので、サンプルを増やしていきながら、今後の中長期の廃炉に向けた戦略を固めていく材料にしたいと考えています」と話した。
事故から40年後の廃炉完了が掲げられている福島第一原発。その「現在地」へと向かう。
■採取された燃料デブリが原発の外へ
「原発事故から13年8か月、廃炉に向けた大きな一歩です。事故後初めて、燃料デブリを乗せた車が第一原発の外へ向かいます」
2024年11月、事故後初めて燃料デブリが取り出された福島第一原発。これにより廃炉は最終段階の「第3期」へと入った。
■廃炉作業の課題「残る"核燃料"への対応」
第一原発に残る「核燃料」は大きく2つ。溶け落ちた核燃料が金属やコンクリートなどを巻き込んで固まった「燃料デブリ」とそれぞれの原子炉建屋に残された「使用済み燃料」だ。
水素爆発を起こしむき出しになった1号機では、この燃料を取り出すときに放射性物質が拡散したり、大量の雨水が入り込んだりしないよう建物全体を覆うカバーの設置が進み、2号機でも2026年3月までに「使用済み燃料」の取り出しに着手する計画だ。
また、2号機では2回目の燃料デブリ採取が、3月から4月に着手と予定されていて、進むデブリの取り出しに向け、廃炉に必要な施設の建設スペースを開けようと処理水タンクの解体も進んでいる。
■使用済み燃料の行先は?
着々と「核燃料」への対処が進むように見える一方で...共用プールでは。
「この水で冷却して冷やしているということですか?」
経済産業省の木野正登参事官は「核燃料非常に長い間発熱をしますので、それを水で冷やしております。ほぼ満杯状態ですので、6千数百体が入っているということですね」と話す。
「(第一原発の使用済み燃料の行き先は?)まずは安全な場所にしっかり保管をしていくということでして、冷却し使い終わった燃料のうち古いものは、金属の容器に入れて保管をします。その先まだ青森県(むつの貯蔵施設、六ヶ所村の核燃料の再処理)に持って行けるかどうかということの調査もしなければいけませんので、まだその先は決まってはいないです」と木野参事官はいう。
「使用済み燃料」の最終的な「行き先」は未定。
「燃料デブリ」を見ても、第一原発に残る880トンのうち14年かけて取り出されたのはわずか0.7グラムと「道筋が見えた」とまでは言えない。
■廃炉作業の課題「増える高線量廃棄物への対応」
そして、廃炉が進むにつれて現れてくる問題も...雨水や地下水などがデブリに触れて発生する「汚染水」から放射性物質を吸着したフィルターや泥などが管理・保管されている施設。処理が進めば進むほど増える廃棄物は敷地を圧迫し続ける。
木野参事官は「今回取り出したデブリの放射線量が8ミリシーベルト/hです。こちら数百ミリですから、当然そのデブリよりも高いわけですね。一般の方が一年間に被ばくする量は2ミリシーベルトとかです。それの数百倍とかそういうレベルだと思ってください」と話す。
今後これはどうやって処理をしていくことになるのか。木野参事官は「まだその処理方法、具体的には決まっていないです。とりあえず容積を減らしてこの中に保管すると」と話す。
■未知の領域へ
廃炉の最終段階・第3期。「最終段階」は、裏を返せば、事故当初・工程を描くことすらできなかった未知の領域に入ったともいえる。
東京電力福島第一廃炉推進カンパニーの小野明プレジデントは「今後廃炉を進めていくと、どんな廃棄物がどのくらい出るかというのはまだ完全につかみ切れていませんので、まだ(廃炉の)絵姿を描くに足れるだけの情報が集まっていないというのが、私の印象です」と話した。
国と東京電力が掲げる廃炉の完了は2051年、すでにその3分の1が経過した。