<福島第一原発>ロボットが再び格納容器へ 2回目のデブリ採取に着手

東京電力は4月15日午前10時3分、福島第一原子力発電所2号機で、事故後2回目となる燃料デブリの試験的取り出しに着手した。
格納容器につながる扉を開けてロボットを格納容器内部に押し込む作業を開始し、ロボットの先端が格納容器につながる扉を通過した状態になったという。
4月15日は、ロボットの先端が格納容器の中90cmほどのところにまで入った状態になる見通し。前回の採取の工程を参考にすると、ロボットの押し込みに約3日、“釣り竿”のように原子炉の底部にロボットをおろして燃料デブリをつかみ取る作業に約2日、ロボットを引き戻すのに約4日かかる想定となる。
東京電力は、前回と同様に“3グラム以下”の取り出しを目指し、前回採取した場所よりも“奥”、原子炉の中心部に近いところを狙いたいとしている。
第一原発2号機では2024年11月、事故後初めてとなる燃料デブリの試験的取り出しに成功し、0.7gの燃料デブリが茨城県や兵庫県の研究施設で分析されている。核燃料の主成分であるウランが検出され、分析を行う研究機関は「典型的な燃料デブリ」と評価している。
一方、前回の取り出しでは、ロボットを押し込むための“棒”の順番が間違っていたことが発覚し作業直前で中断するなどのトラブルも発生。
トラブルの再発を防ぐため、2025年3月25日から31日にかけて、“棒”の接続をするための作業員の訓練を実施。また、放射線の影響で不具合を起こしたとみられるカメラなど、ロボットの一部を改良品に取り換えている。
2回目の採取にも前回同様、“釣り竿型”のロボットを使用しているが、78億円をかけて製作した大型の“ロボットアーム”については、一部のケーブルが経年劣化で断線していたことが発覚。この対応が、今後の計画に与える影響は明確に見通せていない。
また、ロボットアームに搭載するカメラを追加して実際の環境を模擬した試験を行ったところ、配管に引っかかるという事象も発生。ロボットの位置や角度を再調整する必要が出てきたという。
東京電力は「ロボットアームを使用して2025年度後半にも燃料デブリの採取に着手する、という計画は変わっていない」としている。
福島第一原発の1号機から3号機にあるデブリは880t。
国と東京電力は2051年までの廃炉完了を掲げている。
【燃料デブリ試験的取り出し・これまでの経緯】
■2021年:当初の試験的取り出し着手予定
⇒ロボットの開発遅れ、経路への堆積物の詰まり発覚などで延期
■2024年8月22日:試験的取り出し着手を計画するも「現場での棒の順番ミス」が発覚し取りやめ
⇒東京電力が現場に立ち会っていなかったことなどが問題に。
管理体制の見直しを行う。
■2024年9月10日:試験的取り出し作業に着手
■2024年9月14日:ロボットが一度デブリをつかむ
■2024年9月17日:カメラ4台のうち2台の映像が見られなくなるトラブルで中断
⇒高い放射線が影響でカメラ内部に電気がたまり不具合を起こしたと推定。
カメラ交換を決断。
■2024年10月24日:カメラの交換作業を完了
■2024年10月28日:試験的取り出し再開
■2024年10月30日:デブリの把持・吊り上げに成功
■2024年11月2日:デブリを事故後初めて格納容器外へ取り出し成功
■2024年11月5日:放射線量が「取り出し」基準クリアを確認
■2024年11月7日:試験的取り出し作業完了
■2024年11月8日:デブリの水素濃度などが輸送の基準を満たすこと確認
■2024年11月12日:事故後初めてデブリを第一原発構外へ 研究施設へ輸送
■2024年12月26日:JAEA「採取デブリからウラン検出」公表し「典型的な燃料デブリ」と評価
■2024年12月:デブリの非破壊分析が完了・分析機関に分配するためデブリを砕く
■2025年1月8日:JAEA「5つの分析機関への分配決定」公表
■2025年1月10日:デブリの一部をJAEAからMHI原子力研究開発株式会社(NDC)に輸送
■2025年1月22日:デブリの一部をSPring-8とJAEA原子力科学研究所に輸送完了
■2025年1月31日:デブリの一部をJAEAから日本核燃料開発株式会社(NFD)に輸送。予定されていたすべての研究施設への輸送が終了。
■2025年3月25日:2回目の採取に向け前回ミスがあった「棒の順番ミス」の訓練開始
■2025年4月14日:東京電力「準備が整った」として4月15日に2回目採取に着手することを公表
■2025年4月15日:ロボットの先端が格納容器につながる扉を通過し「2回目の採取着手」