郡山市長選挙の争点 子育て支援の課題 広がる"見えない貧困" 求められる新たな仕組みづくり【福島発】
任期満了に伴い、4月20日に行われる福島県郡山市の市長選挙。これまでに新人4人が立候補している。今回はベビーファーストをすすめてきた郡山市の「子育て」支援の課題を探る。
■2013年からベビーファーストの施策
「子供を中心に第一に考える『子本主義』の立場で市政を運営して参ります」2013年、初当選後の市議会でこう語った品川萬里市長。第1子の保育料無償化や待機児童の解消などべビーファーストの施策を進めてきた。
屋内遊戯施設のペップキッズこおりやまで子育て世代に聞いた。
「兄弟3人男の子なので、けっこう食費だけでたぶん7~8万とかは、いってるんじゃないかと。値段見てその日安いものを選んで買ってるって感じです」「これから保育園とか幼稚園考えているので、子どもを預けて、働きやすい環境になるようなことをやってくれたら良いなって思います」といった声が上がった。
■隠れた貧困層が増加
保護者から聞こえてきた生活への様々な不安...。教育や社会福祉に詳しい専門家は、郡山市でも"隠れた貧困層"が増えつつあると指摘する。
郡山女子大学短期大学部の山脇功次講師は「やはり郡山市の特徴として、貧困というものが顕在化しにくい、なかなか"目に見えない貧困"というものが増加しているということが考えられるかなと思います」と話す。
■12%超が生活困窮
郡山市が市の全小学5年生と中学2年生を対象に行った調査によると、生活に困窮している家庭は全体の12.7%。そのうち8割以上が働いていても生活が苦しい、ワーキングプアだという。
郡山女子大学短期大学部の山脇講師は「もう(貧困が)目に見えないままになってしまうと、ゆくゆくは本当に可能性としては、虐待の可能性もありますし、各地域の特性ごとに準じた貧困制度っていうのが必要なのではないかなと」と指摘する。
■こども食堂を運営する元教師
郡山市大槻町の公民館。こども食堂を運営する団体が、弁当の仕込みを行っていた。
元小学校教師の遠藤洋子さん。退職後、こども食堂を運営する「つばさ会」を立ち上げた。「実は私もシングルだったので、子ども育てるのにやっぱ大変苦労しましたので、そういう意味では応援してあげたいなっていう風に思ったわけです」と遠藤さんは話す。
地元のボランティア20人ほどからなる「つばさ会」は、市内の家庭に週2回、弁当を提供している。この日のメニューはちらし寿司だ。
郡山市内では現在、32の団体がこども食堂を運営していて、商品券の補助や地元企業・団体からも支援を受けながら、食堂を運営している。
こども食堂の利用者は「安いからですか、家庭が助かるからですね。この子は高齢出産だったので、上の子とはやっぱり違いますね体力的に。だから余計こういうお弁当とかあると助かります」と話す。
■"見えない貧困"の広がり
活動を始めて8年目。これまで多くの家庭を支援してきた遠藤さんも、"見えない貧困"が水面下で広がりつつあると感じている。
「まだまだここに来られないで困ってる人もいるようには、なんとなく感じたり、聞いたりもするので。地域ぐるみで応援して育ててもらった方が、子どもも豊かな情愛を持ってね、育つんじゃないかなって思いますので」と遠藤さんは話した。
「誰ひとり取り残さないまち」を掲げる郡山市。「見えない貧困」を救う新たな仕組みづくりも喫緊の課題だ。
山脇講師は"見えない貧困"が増えている理由について、情報共有の希薄化をあげている。少子化による学校の統廃合など、教育現場の体制が変わっていることも一因だという。行政や民間の団体とより密に情報を共有し、地域の特徴にあった、持続的なサポート体制が必要だということだ。
教員や保育士のなりて不足という課題も残されている。
■各候補者の主張
<子育て支援について>
勅使河原候補は「子育て・教育支援と商業活性化・人材確保を好循環させる」
高橋候補は「市立大学として宇宙工科大学を設立し若者たちの選択肢を増やす」
椎根候補は「給食費無償化の継続と成長段階に応じた切れ目ない支援」
大坂候補は「育児休業給付や手当を新たなデジタル通貨・地域通貨で充実」
(福島テレビが行った候補者アンケートから)
郡山市長選挙は4月20日投票、即日開票される。