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燃料デブリ 前回より格納容器の中心部近くでの採取も線量は半分<福島第一原発>

福島第一原子力発電所2号機で行われている燃料デブリの試験的取り出しをめぐり、東京電力は4月21日、格納容器の外にまで引き出した採取デブリの放射線量を測定し、20cmの距離で1時間あたり約0.1ミリシーベルトだったと公表した。
日本で自然界から1年間に受ける放射線量は平均で2.1ミリシーベルトとされているため、この年間の平均量に21時間で達する計算になる。

"20cmの距離で1時間あたり24ミリシーベルト以下"という"安全に外部に運搬できる基準"をクリアしていることが確認され、これから運搬に向けた準備を進める。4月23日にも放射線を遮ることができる専用の容器に採取した燃料デブリを入れて、試験的取り出し作業を完了する見通し。

前回、2024年11月に行われた試験的取り出しよりも、今回は"奥"、格納容器の中心部に近いところを狙って採取を実施した。
違う場所でのサンプル採取がねらいで、燃料デブリの分布を明らかにするための材料としたい考えだが、前回の放射線量は同じく20cmの距離で1時間あたり約0.2ミリシーベルト。格納容器の中心に近いにもかかわらず、放射線量は前回の"半分"だったことになる。
採取された燃料デブリは、遠隔カメラの映像で確認する限りでは黄色っぽい色で、7mm以内の大きさとみられる。


第一原発2号機では2024年11月、事故後初めてとなる燃料デブリの試験的取り出しに成功し、0.7gの燃料デブリが茨城県や兵庫県の研究施設で分析されている。
今回も作業が順調に進めば、前回と同じようにまずは日本原子力研究開発機構(JAEA)の大洗原子力工学研究所に運ばれ、分析が進められることになる。JAEAは1979年にアメリカ・スリーマイル島の原発事故で発生した燃料デブリの研究も行ってきた。前回採取された第一原発の燃料デブリについては分析中だが、これまでに核燃料の主成分であるウランが検出され「典型的な燃料デブリ」と評価しているところ。


燃料デブリ試験的取り出しの目的は、今後の大規模取出しに備えた取り出し工法の検討と、原子炉内でいまだ明確な把握が進まないデブリの分布の確認に貢献するため。
第一原発に880tの燃料デブリが残るなか、前回の取り出しが0.7gと、2011年の事故から経過しても"12億分の1"程度にとどまる。
強い放射線の発信源である燃料デブリには人が直接近づくことはできず、また、燃料デブリに触れた雨水や地下水が"汚染水"となって敷地にたまり続け、"処理水"のタンクは敷地を圧迫し続ける。
燃料デブリの取り出しは廃炉の"最難関"とされている。


福島第一原発の廃炉は、前回の燃料デブリ採取の着手をもって最終段階の「第3期」へと入った。一方で、何をもって「廃炉」の判断とするか、明確なゴールは示されていない。
2011年の事故で、2号機は水素爆発を起こしておらず1・3号機と比べて損傷が少ないとされることから先行的に試験的取り出しが行われているが、事故から14年が経過してまだ2回目。3号機では燃料デブリの大規模取出しが計画されているが明確なスケジュールは示されておらず、1号機では内部調査が継続中。

国と東京電力は2051年までの廃炉完了を掲げている。