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危険な盛土 なぜ造成された 狙われた西郷村 当時、法的規制のない空白地帯《福島重大ニュース》

シリーズで福島県内で今年起きた重大ニュースを振り返る。「西郷村の盛り土問題」。危険な盛り土はなぜ造成されたのか?取材を進めると狙われた一つの理由が浮かんできた。

<村に危険な盛土>
福島県西郷村真船地区に造成された盛り土。その高さ、22メートル。
2024年8月、福島県は災害の危険性があるとして初めて行政代執行に着手した。
近隣住民の児山美智子さんは「なんでっていう感じですかね。なんでここなのっていう感じが第一番ですよね」と話す。
住民も抱く疑問。なぜこの場所に盛り土は造成されたのか?

<村に残された盛土の記録>
西郷村が盛り土の造成を把握してから一連の対応を記録した資料。そこには、初めての事態に困惑する様子が記されていた。
村にいち早く盛土の情報を提供をした川谷行政区長の黒田耕秀さん。2023年8月二人の男が訪ねてきたという。
黒田さんは「『あそこ、傾斜地だし、平にすれば眺めは良いなっと思ったから、別荘みたいな宅地にして、ログハウスみたいなの建てれば』っていう表現はしていましたね。おかしいなって思ったし。あそこの土砂を入れている会社って聞いてから、あんまり良い人たちではないんじゃないかと思って」と話す。

<盛土がみるみる大きく>
午前2時から始まり午後6時まで続く土砂の搬入。連日、関東ナンバーの大型車両が出入りし、盛り土はみるみる大きくなった。
住民からの相談を受け、村も対応を迫られた。西郷村建設課の山根優管理係長は「基本一緒です。『やめてください、許可してないですよ』という旨の説明と、『すぐ中止してください』というのは言って。向こうも『上からの指示がないと出来ないだよね』って」という。

道路の使用許可を得ず行われていた土砂の搬入。村はバリケードを設置し、正規の手続きをとるよう指導したが、作業が中断されることはなかった。

<条例のない空白地帯>
西郷村にある別の盛り土を巡り、起訴された茨城県の男。この男の犯行に至る経緯から、なぜ西郷村が狙われたのか、ある可能性が見えてくる。
建設現場などで出た土砂の処分を生業にしていた男。過去に栃木県にある複数の自治体でも土砂の搬入を繰り返し盛り土を造成していた。
栃木県は25年前、盛り土などを規制する「土砂条例」を施行、男に対し撤去を求める行政処分を出していた。この盛り土などを規制する条例は、栃木の他、茨城・群馬でも施行。関東圏に近い福島県は条例のない空白の地域だった。

西郷村の山根管理係長は「福島県とか西郷村においては、そのような条例がないような状況だったので、関東の方で、盛りやすいところは盛って、段々と場所を探した中で、段々関東に近い西郷村とかも見つけたんじゃないかなと個人的には思いますけども」と話した。

<発覚後、業者は?>
盛り土が報道によって取り上げられようになった2023年12月、村に電話があった。
西郷村建設課の山根管理係長は「施工者本人から、村に連絡があって、内容は『迷惑かけた』みたいな感じで、現場とりあえず完了して、今後、土砂を搬入する予定はないということで。現場について、これから太陽光事業かなんか考えていくというような話をされてましたね。その後、施工者の方とは話していないですね。接触していないです」と話す。

<福島県が法的規制開始>
福島県は2024年3月、先行的に西郷村と矢祭町を盛土規制法に基づいた区域に指定し、規制を開始。その後、県内全域が対象となった。
「盛土規制法第20条第5項の規定に基づき、行政代執行を開始いたします」2024年8月、県は初めて盛土規制法に基づく行政代執行に着手。刑事告発によって盛り土の造成を主導していた埼玉県の68歳の男は書類送検された。

西郷村の山根管理係長は「村に良くないことが起きそうな行為に対しての規制を、法的な規制をちゃんと素早くやっておくというのが教訓ですかね。生活環境を害するような行為に対しての素早い法整備を考えていくしかないのかな」と話した。

<住民の不安は残る>
行政代執行の費用2億5500万円は税金を原資としている。行政代執行は2025年3月に完了する計画だが、盛り土の土砂は全てが撤去されない。
近隣住民の児山美智子さんは「絶対安心とは言い切れないと思うんです。何にも無かった所にこれだけの盛土が残っているので、今後も、やっぱり皆で見ていって欲しいなって」と話した。
住民の不安も拭えていないまま、残っている。