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燃料デブリ取り出し 事故後初めて原発の外へ 2051年の廃炉...計画の実現は?《福島重大ニュース》  

2024年は福島第一原子力発電所で廃炉に向けた一つの動きがあった。廃炉の「本丸」と言われる燃料デブリが、事故後初めて原子炉の外に、そして第一原発の敷地の外へと取り出され、いま、今後の廃炉を占う分析が進められている。

<2011年3月の原発事故>
「2回目の爆発がありました。たぶん水素爆発です」
当時の想定の2倍以上、最大13メートルと推定される津波に襲われ、炉心の損傷と外部電源の喪失によって過酷な事故を起こした福島第一原子力発電所。
1号機から3号機の原子炉の中では核燃料が溶け落ち、周りの金属やコンクリートを巻き込んで固まった「燃料デブリ」が大量に発生した。

<燃料デブリが原発の外へ>
あの日から約13年9ヵ月、今年になってようやく、「廃炉の本丸」に迫る動きが見え始めた。
「原発事故から13年8ヵ月、廃炉に向けた大きな一歩です。事故後初めて、燃料デブリを乗せた車が第一原発の外へ向かいます」

2号機の燃料デブリが事故後初めて第一原発の外へ。約150キロの道のりを走り、茨城県にある日本原子力研究開発機構=JAEAの研究施設へと運び込まれた。
JAEAでは、これまで核燃料の主成分であるウランに金属やコンクリートを混ぜ込み数千度の高温で熱した「模擬デブリ」を使った研究で、デブリ引き受けの準備を進めてきたが、ようやくその「本物」にたどり着いた形。
含まれている成分などを分析することで、事故が起きたときの状況や原子炉の中のデブリの分布を把握したい考えだ。
JAEA担当者は「今後将来、本格的な燃料取出しに向けた具体的な方策の検討に資するものというふうに考えてございます」と話した。

<廃炉への疑問>
廃炉の進展への期待がかかる一方、これが「どれほどの一歩」なのかには疑問を唱える人もいる。「ほんの1グラムにも満たないものをどこからかとってきて、それで全部を代表するわけにいかないよね、880トン」と話すのは、福島市出身で原子力規制委員会の初代委員長を務めた田中俊一さんだ。

<元原子力規制委員長が唱えるズレ>
原子力規制委員会は、第一原発の事故後、原子力発電の「規制」と「推進」を明確に分離すべきという考えのもと新たに立ち上がった「規制」の組織。
立ち上げ後の組織を率い、廃炉を見つめ続ける田中さん、多くの人が期待する「廃炉」の姿と現実には大きなずれがあるという。「もともとね、1Fの廃炉っていうのはね、デブリを取り出すことが廃炉ではないんですよ。デブリを取り出せるかの如く思っているかもしれないですけど、なかなかそれは、私ははっきり言って非常に難しい作業だと思います。不可能に近いくらい」田中さんはそう話す。

国と東京電力が掲げる事故後40年、「2051年の廃炉」。
燃料デブリの採取が始まったことを受けて、第一原発の廃炉は最終段階の「第3期」へと入ったが、1号機から3号機までには880トンものデブリが残されていると推計されている。
ミスでのデブリ取り出し作業中断に、当時の齋藤健経済産業大臣は「地元、国内外に不安を抱かせるものでありまして、猛省を促したいと思います」と話した。

<2051年廃炉の行方>
0.7グラムを取り出すまでにも作業工程のミスや機器の不具合での中断を起こした状況で、2051年まで残り27年、単純計算で1日90キロを取り出すことができるのか...率直に・正直に地元と話し合う段階に来ていると田中さんは話す。
「1Fの敷地外に影響を及ぼさない段階になったら廃炉は一応一段落したと。それ以後は中の問題としてやっていただくしかない。そういうことだと思いますよ。最初の判断は『よく分からないから』っていうこともあるでしょう。その判断の過ちとか色んなものを変えることについて、もっと勇気を持たないとダメなんですよ。そうじゃないと、結果的には住民、国民の損失になるだけなんですよ。今までいろいろやってきたけれども、できることできないこと、かなり難しいこと、努力はするけれどもできないかもしれないこと、そういうことをきちんと住民に説明するというのが、まず基本だと思いますよ。東京電力にもう一回確かめてみたら良いですよ、『廃炉ってどういう物だと思ってますか』って」と田中さんは言う。

<東京電力の描く廃炉>
東京電力ホールディングス福島復興本社の秋本展秀代表は、2051年の廃炉というのが、具体的にどのような姿を描いているのかという質問に対して「廃炉の絵姿がどうなんだということは、実はまだ分かっているようで誰も分かっていない。人によってとらえていることが全然違う部分だと思うんですね。そこをある意味、誰かが一方的に決める話ではない。国が一方的に決めるものでも、ましてや東電が一方的に決めることでもない。地域の方のご意向だけでも。いろんな関係者がいて、きちんと議論を重ねる対話を重ねる中で、コンセンサスを得ていくことが大事だと思います」と答えた。

<採取したデブリにウラン検出>
燃料デブリの取り出しがどれくらいの一歩なのかは、そのゴールの姿が見えていないと判断することもできない。
東京電力は12月26日、取り出したデブリに核燃料の主成分であるウランが含まれていたことが明らかになったと公表した。
作業が進んだ分、今後の絵姿もしっかり見せてほしい。