0.7グラムの燃料デブリは砕いて「小分け」完了 5つの分析機関への分配が決定<福島第一原発>
福島第一原子力発電所2号機で事故後初めて採取に成功した燃料デブリについて、分析を行っている日本原子力研究開発機構(JAEA)は、受け入れた約0.7グラムのデブリを2024年末までに砕いて小分けにする作業を完了したとして、2025年1月8日に「5つの分析機関に分配できることが決まった」と公表した。
採取された燃料デブリは約0.7グラムだが、分析機関にそれぞれ0.1グラム程度分配することができる見通しで、受け入れの調整がつき次第、燃料デブリを輸送するとしている。
JAEAではこれまで、X線などを使った燃料デブリ表面の分析などで、核燃料の主な成分である「ウラン」が検出されたことなどを明らかにしているが、さらに詳細に内部の構造を分析する考え。
今後、燃料デブリの分析を行うのはJAEAの大洗原子力工学研究所のほか、同じくJAEAの原子力科学研究所、また、日本核燃料開発株式会社(NFD)、MHI原子力研究開発株式会社(NDC)、さらに兵庫県にある大型放射光施設SPring-8。SPring-8は細く強力な電磁波である「放射光」を用い、物質の種類や構造、性質を詳しく知ることが期待できる施設で、いわば強力なレントゲンで物質の内部を明らかにするようなもの。創薬や産業製品の評価といった研究にも用いられたことがある。
福島第一原発では2011年の事故から約13年8ヵ月が経過した2024年11月7日に、溶け落ちた核燃料が原子炉内の金属やコンクリートと混ざり合って冷え固まった「燃料デブリ」の試験的取り出しに成功した。およそ1年かけて詳細な分析を行い、今後計画される本格取り出しの方法の検討などに活かしたい考え。
【燃料デブリ試験的取り出し・これまでの経緯】
■2021年:当初の試験的取り出し着手予定
⇒ロボットの開発遅れ、経路への堆積物の詰まり発覚などで延期
■2024年8月22日:試験的取り出し着手を計画するも「現場での棒の順番ミス」が発覚し取りやめ
⇒東京電力が現場に立ち会っていなかったことなどが問題に。
管理体制の見直しを行う。
■2024年9月10日:試験的取り出し作業に着手
■2024年9月14日:ロボットが一度デブリをつかむ
■2024年9月17日:カメラ4台のうち2台の映像が見られなくなるトラブルで中断
⇒高い放射線が影響でカメラ内部に電気がたまり不具合を起こしたと推定。
カメラ交換を決断。
■2024年10月24日:カメラの交換作業を完了
■2024年10月28日:試験的取り出し再開
■2024年10月30日:デブリの把持・吊り上げに成功
■2024年11月2日:デブリを事故後初めて格納容器外へ取り出し成功
■2024年11月5日:放射線量が「取り出し」基準クリアを確認
■2024年11月7日:試験的取り出し作業完了
■2024年11月8日:デブリの水素濃度などが輸送の基準を満たすこと確認
■2024年11月12日:事故後初めてデブリを第一原発構外へ 研究施設へ輸送