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苦境に立つ畳店 小物やカフェで伝える新たな魅力 世界にも誇れるTATAMIを発信【福島発】

日本の伝統的な床材として親しまれる畳。福島県須賀川市の久保木畳店は、280年以上にわたり技をつないできた。15代目の久保木史朗さんは、畳の新たな魅力を伝える取り組みを始めている。久保木さんの挑戦を追った。

<まるでテーマパーク>
「こちらは元々、畳の工場スペースでした。在庫の圧縮や整理整頓を徹底し3分の1に工場スペースを圧縮して、人が来てもらえるような施設に生まれ変わらせました」と久保木さんが紹介するのは、畳の複合体験施設「TATAMI VILLAGE」だ。
工場の見学や畳作り体験が楽しめ、畳の素材を生かしたブックカバーやバッグなども販売されている。

<カフェスペースでも畳推し>
和のスイーツが楽しめるおしゃれなカフェ「TATAMI CAFE」も併設。畳の良さを肌で感じてもらうスペースにした。利用客は「ダラダラできる。リラックスできるというか、のんびりできます」と畳ならではの居心地の良さを体感しているようだ。
店長の西藤あゆみさんは「『畳を持たない方にも畳の空間を提供する』ということがコンセプト。よくお声いただくのが、小さなお子さんを連れていけるカフェがないので、この小上がりに寝せながらゆっくりお茶をできるっていうので喜んでいただけて畳をもっと身近に感じて欲しい」と話す。

<畳を取り巻く厳しい状況に一念発起>
体験施設を作った背景にあるのが、住宅の洋風化による「畳離れ」だ。「やっぱり、畳なかなかそんな、簡単に買ってもらえないですね。やっぱりお客さんに価値を提供しないと続けられないなっていうのは感じています」と久保木さんはいう。
5年前まで東京の大手企業に勤めていた久保木さん。先代の父親から家業の厳しい現状を聞き、むしろ闘志が湧いてきた。「チラシ出したり宣伝したりしても、電話がならなくなって、その売り上げも下がってきてしまっていると。継ぐ気はなかったが、父から家業の厳しい状況っていうのを聞いて、『自分がなんとかしたい』と思って戻ってきた」と久保木さんと語る。

<TATAMIを世界へ>
そこで試行錯誤の末生み出したのが、畳で作ったコースター。SNSに投稿すると東京の高級寿司店から注文が入り、畳の「可能性」に気づいた。「どうすればいいか悩んでいる中で、商品を磨けば、そういうお店からも要望があるということがすごく嬉しくて。畳って古臭くて、もうみんないらないのかなと悩んでいたが、でもそうではないということの希望の光がそこには見えた」と話す。
畳を世界にも広めたいと考えた久保木さんは、海外でも生活の一部に取り入れてもらおうとニューヨークへ。飲食店などに飛び込み営業を重ねた結果、輸出先は28か国まで拡大。
店には畳への揺るぎない使命感と夢を掲げ、TATAMIの魅力を売り込む。

「海外のお客さんから注文もらったものを福島・須賀川で作って、ここから輸出すると。そして、そこをきっかけに福島・須賀川に人を呼べるような仕掛けづくりにより力を入れていきたい」と話す久保木さん。
畳を後世に残し、世界に広めるために。久保木さんの奮闘はまだまだ続く。