ブランド肉に保湿クリーム ヒツジの可能性無限大 若者が憧れる畜産業を《もっと!ぐっと!葛尾村》
畜産業が盛んな福島県葛尾村で、特産品作りに取り組む農家・吉田健さん。新たな特産品を生み出そうと2019年にヒツジの肥育を始めた。ウシの肥育経験を生かし、甘味と旨味が強いオリジナルブランドの肉「Melty Sheep(メルティ―シープ)」を生産。「ふるさと納税」の返礼品として定着した。さらに若い世代の力で活気を生み出そうと、新たな商品を開発した。
■廃棄していた羊毛に着目
ヒツジで新たな特産品作りをしている牛屋の吉田健(よしだ つよし)さん。2024年8月に、新しい商品の保湿クリームの「VALOMETZ(ヴァロメッツ)」を生み出した。
原料は「羊毛」。これまでは大部分を捨てていたが、皮膚を健康に保つ成分「ケラチン」の、質の良さに着目。栃木県のコンサルタント会社とタッグを組み、5年をかけて商品化に成功した
牛屋の吉田健さんは「ヒツジの価値というものが、かなり高くなっている。やはり、誰も目をつけていない所、それをしっかり形が作れていれば、可能性ってまだまだ大きいと思う」と話す。
国産の羊毛を使った化粧品は、国内初で約1万個がすでに売れている。
■若い世代が憧れる畜産業に
ヒツジを使った商品を次々と生み出す吉田さん。「これからの若い世代に、魅力ある畜産経営っていうのを伝えていきたい」と話し、若い人たちに畜産業の魅力を伝え、働き手を増やしたいと考えている。
畜産が盛んだった葛尾村は、震災前までは100軒を超える農家が畜産を営んでいた。原発事故による避難指示は2016年に村の大部分で解除されたが、畜産農家の数は現在20軒と、全盛期の5分の1以下に。それでも、吉田さんの思いに共感した牛屋の従業員は、9人のうち6人が20代と、若い世代が畜産業に従事している。
■未来を見つめる若者たち
埼玉県出身の立石剛大(たていし ごうた)さんは、葛尾村の「地域おこし協力隊」として2022年から働いていて、この春には正社員になる。「色んな人が来て、何か新しい事をしたいという思いを実現出来るような地域になればよい」と話す立石さんは、さらに技術を学んで、村内で独立を目指しているという。
さらに、吉田さんの長男・隼(はやぶさ)さんも、まもなく高校を卒業し、牛屋を支える仲間に加わる。「これからもっと皆で村を活気づけて、皆さんの協力を借りながら世界に畜産の魅力を発信していきたい」と話す。
現在、村の居住者は461人。震災前と比べて3割に留まっているのが現状だ。
しかし、吉田さんは「葛尾村に必要なのは若い人の力。若い人のエネルギーがあれば、多少の難題・問題はクリア出来ると思う。チャレンジ精神はすごく重要・大切だと思っている」と話すように、将来の畜産業を担う若い世代が村全体を元気にすると確信している。