通常業務に健康観察の委託業務 コロナ禍の訪問看護の今 高齢者の命をまもるために【福島発】
新型コロナウイルスの感染状況が落ち着きを見せつつあるが、命を守る現場は過酷さを増していた。高齢者の命を守る訪問看護の今を追った。
***
<8人のスタッフで約110人の訪問介護>
福島県福島市にある「訪問看護ステーションしみず」は、地域の高齢者など約110人の利用者の自宅を訪問し、病気や障がいに応じた訪問看護を行っている。
スタッフは看護師など8人。1人のスタッフが一日5人から6人を担当し、土日も休まず対応している。
<新型コロナ患者の対応も>
医療用のマスクにキャップ、長袖ガウンにフェイスシールド、手袋は2重に...新型コロナに感染してしまった利用者や、発熱などの症状がある利用者の自宅を訪れる際に欠かせない装備を整える。
看護師:「会話するのも苦しいのと、お年寄りだと耳が遠いのでこれをしているとなかなか声が伝わりにくくて。やっぱり近づかないといけなくなっちゃったり。あとは夏、汗でぬれちゃいます」
防護服は1回の訪問ごとに着替えるため、通常よりも10分から15分ほど時間がかかる。その訪問看護の現場でいま大きな負荷となっているのが、利用者以外の自宅療養者に対する健康観察業務。
<利用者以外の健康観察業務も>
2023年2月時点で、福島県内では37カ所の訪問看護事業者が保健所から委託を受け、重症化リスクの高い高齢者などに電話で1日2回の健康観察を行っている。電話での確認が難しく、訪問するケースも少なくない。
この日訪れたのは、1人暮らしで80代の女性の自宅。新型コロナの感染が確認されたが、軽症のため自宅で療養していた。
体温だけでなく、症状の程度を確認するため血中の「酸素飽和度」を測定。胸の痛みがないかなど、体調の小さな変化にも目を光らせる。
この女性は、この日で療養期間が解除になるはずだったが...
患者:「そういう風に言われても、一般的にはあの人熱出したんだとか嫌なんだとか言われると。言われる方は...言われて当たり前なんだけど」
体温の測定で微熱が確認されたことから、保健所に報告し今後は医師と相談して様子を見ることになった。
<通常業務と依頼された業務...現場はひっ迫>
防護服は順番を守って脱ぎ、その都度手指の消毒。細心の注意を払いながら、ゴミ袋に入れ密封する。
訪問看護ステーションしみず サテライトせのうえ・橘内ゆき子さん:「通常の業務と、そのほかに保健所から依頼された健康観察というのがあると、業務はひっ迫してしまっています」
訪問看護の業務で感染したケースはないが、第8波のピーク時には職員の感染などでスタッフが一時3人に。重症化リスクのある高齢者などの訪問ができなくなることは、命にかかわる問題だけに、厳しい体制になっても何とか対応を続けている。
訪問看護ステーションしみず サテライトせのうえ・橘内ゆき子さん:「健康な成人の方にとっては、もうコロナは普通の風邪みたいな風潮になってきていますけど、やはり基礎疾患ある人や高齢者にとっては、命に直結する病気であることは変わりなくて。基本的な感染対策は継続していただきたいなと思っています」