2月27日はバスを利用してみたという方もいるかもしれない。福島県内の路線バスの運賃が無料となる初めての実証事業が行われた。ただ、その背景にはバス会社が置かれた厳しい状況がある。

＜初の試み「バス無料デー」＞

多くの方が利用する路線バスだが、2月27日はいつもと違う。バスの前方には「福島県内バス無料デー」と書かれている。
「バス無料デー」その名の通り、福島交通や新常磐交通など県内6つのバス会社が運行する460の路線で、運賃が無料になった。福島県と福島県バス協会が企画した実証事業で、国の交付金が活用されている。目的は厳しい経営状況が続くバス会社を支援し、バスの利用を促すことだ。

バスの利用者は「後期高齢なので、段々車の運転できなくなると思ったから、ちょっとまた体験して、どういうもんかと思って、その意味もあって、今日は乗ってみました」「（バスに）あんまり乗らない。近いんです実は、駅までね。これからちょっと使ってみようかなと思います」と話す。




＜デパートでもイベント＞

郡山市のうすい百貨店では、バス無料デーに合わせてイベントを実施。バスを利用しアンケートに答えた来店客、先着50人に北海道のお菓子をプレゼントした。開店と同時に行列ができ、15分ほどで配布が終了。うすい百貨店では、前週の同じ曜日と比べ、来店客が2割ほど増えたという。
うすい百貨店の興治沙緒里さんは「こういう機会にバスを利用してみようというお考えをお持ちで、うすいにお越しいただける、駅前にお越しいただけるというのが、非常に良い取り組みかなと思っております」と話した。

＜厳しい経営環境と運転手不足＞

運賃が無料という大きなインパクトがある今回の実証事業。その背景には、県内のバス会社が置かれている厳しい現状がある。
いわき市に本社がある新常磐交通。少子高齢化による利用者の減少や燃料費の高騰などから毎年約2億5千万円の赤字が続いている。新常磐交通の門馬誠常務取締役は「物価の上昇はやっぱり大変ですね。燃料の高止まり、なかなか下がらない。経費いろいろバスを運行するためにはものすごくかかりますからね。修繕費とかね」と話す。

さらに費用面だけでなく、大きな課題となっているのが運転手不足。高齢化と労働時間の規制強化が、運転手の担い手不足に拍車をかけている。
2024年4月には14の路線、合わせて43.31キロの路線バスを廃止するなど苦渋の決断を迫られた。門馬常務は「路線バスがダイヤ減らしたとか、路線から撤退するとか本当、深刻な状況になっているというのは間違いありません」という。

路線を減らす一方で、タッチ式の交通カードを新たに導入するなど利便性の向上を図っている新常磐交通。バス無料デーを通じて、路線バスへの関心を高めるきっかけになればと期待を寄せている。「この利用促進を、みんなでやっぱり社会の中で公共交通をよく考えていただき、ご理解をいただきたいと思ってます」と新常磐交通の門馬常務は話した。

＜3月8日もバス無料デー実施＞

バス無料デーの実証事業では、利用者からアンケートを集めてサービスの向上や改善に活かされる。3月8日にも行われることになっていて、紹介したうすい百貨店での特典も同様に行われる予定。
街なかなどを巡ってもらう目的もあるということで、この機会に路線バスの魅力を味わってみては。