最高責任者"廃炉の絵姿まだ描けていない" 2051年廃炉まで3分の1が経過<福島第一原発>

【"事故から40年"の3分の1が経過 最終段階に進むも...】
2011年3月11日の東日本大震災による地震や津波を受けた福島第一原子力発電所では、水素爆発や炉心溶融などの過酷事故が発生し、事故から40年後の2051年までの廃炉完了を掲げて作業が進められている。
事故から14年、廃炉までの約束の3分の1が過ぎた。
2024年には2号機での燃料デブリの採取により、廃炉の最終段階である「第3期」に入ったが、廃炉と汚染水対策の最高責任者である東京電力ホールディングス・福島第一廃炉推進カンパニーの小野明プレジデントは、福島テレビのインタビューに「廃炉の絵姿は描けていない」としている。
【2024年度は"一定の成果"】
Qこの1年の成果と見えてきた課題は?
2024年度を振り返ると色々な進捗と課題があった。一定の成果があったと言えると思う。
具体的にはやはり2号機から試験的に燃料デブリを取り出せたというのは非常に大きいと思う。0.7グラムという非常に少量の燃料デブリだが、現在分析を進めているところ。
我々としてはこれでいろいろな情報が得られると思っているが「この燃料デブリ1粒ですべて分かります」ということではない。代表性でいうとまだまだ足りないと思っている。今後サンプルを増やすということで、春には2回目の着手をしたいなと考えている。
そのほか、2023年に処理水の海洋放出が始まったが、10回の放出が完了していて、海域モニタリングの結果を見ても異常が見られないので、我々としては計画的に安全な放出ができているだろうと考えている。これをしっかりと続けて実績を積んでいく必要がある。
海洋放出が進むとタンクが空いてくるので、タンクの解体に着手したというのも非常に大きなポイントだと思う。やはり福島第一の構内に1000基以上タンクがあるので、タンク解体に向けての第一歩という意味では大きな意味を持っていると思う。
当然ながら色々な知見を蓄えていく必要はあって、将来の廃炉の進捗には大きく寄与するのだろうと期待している。
1号機の(燃料取出しに向けた)カバー設置も進んでいるし、2号機の使用済み燃料取出しのための設備も完成に近づいてきている。2025年度は燃料プールの使用済み燃料の取り出しということで、大きな事象が続くと思っている。しっかりと緊張感を持ってやっていきたい。
課題については、2023年の10月に作業員の身体汚染があって、2024年の2月には放射性物質を含む水が漏れたということもあって、ご心配を皆様におかけしたことにお詫び申し上げるしかない。燃料デブリの試験的取り出しの時に、押し込みパイプの順番を間違えたりカメラの不具合で作業が中断したこともあり、通常の現場と比べると厳しい現場だということを痛感した次第。
トラブルが続いて以降、リスクを抽出する作業を始めているが、それをもっと幅広にしっかりやっていくということと、現場レベルでワンチームになることをしっかりと進めていきたい。
【2051年の廃炉の絵姿 "描けていない"】
Qデブリの試験的取り出しは成功とみているか?
我々が計画した通りには取れたので、そういう意味では良かったと思う。
ただ0.7グラムと非常に少量で、もっと取っていかなければいかないが、燃料デブリの取り出しは福島第一の廃炉の本丸なので、本丸に向かって第一歩を踏み出したのは非常に大きいと思う。
Q2051年の廃炉に向けて現在は何%?
なかなか言いづらい気はするが、燃料デブリの取り出しにも着手できたし、これからもサンプルを増やす計画は立てている。3号機を対象に大規模取出しの検討も始めている。処理水の海洋放出も安全に放出ができていると考えている。色々な面で成果が得られてきていると思っている。
そういう意味では、しっかり廃炉の完了に向けて進められていると思っている。
Q2051年の廃炉の実現性は?
国の中長期ロードマップに示されている「事故から30~40年での廃炉」は、我々としてはひとつの目標として動いている。
ただ、40年先の絵姿というのはまだ描けていないけれども、40年で終えるということを前提として足元から色々な作業を積み上げて廃炉を計画的に安全に進めるというやり方をしている。
我々として今の時点での「事故から30~40年での廃炉」は大きな目標として動いている。
【採取したデブリの印象 "放射線量低い"】
Q「廃炉」はどういう状態か?
人によって皆さん違うと思うが、まだ(廃炉の)絵姿を描くに足れるだけの情報が集まっていないというのが私の印象。
燃料デブリもやっと1粒とれた状況。廃棄物についての情報もこれから集めていかなければいけないので、まずは燃料・廃棄物の情報かと思うが、そういうものをもとにいかに安全性を確保できるかという技術的な結論・見通しを得て、それをベースに社会的な側面も踏まえながら、地元などと相談させていただきながら、最終的に絵姿を絞り込んでいくという段取りになると思う。
絵姿を描くだけの情報が集まっていないと思うので、これをなるべく早く集めていくのが一番大事なポイントかと思う。
Q取り出した燃料デブリの印象は?
意外と我々の印象では放射線量が低いなと。非常に大きな成果のひとつだと思う。
代表性があるかどうかは別問題だが、もしあのレベルの放射線量であれば、それによって今後取り出した燃料デブリの移送・保管に関する設備の設計に影響が出てくる。
データを集めて設計を進めることに力を入れたい。
Qデブリ以外のリスクは?
まずしっかりと保管・管理をすればリスクは抑えられると思っている。
今後廃炉を進めていくと、どんな廃棄物がどのくらい出るかというのはまだ完全につかみ切れていないので、いずれにしてもしっかりと保管・管理できる状態に持っていく。
水を含む廃棄物を搾り取って固形化して保管するなど、安全な状態に持って行くのが大事。
Q次の1年への思いは?
廃炉というのはやはり、核燃料によるリスクをいかに早く下げるかということだと思う。2025年度は使用済み燃料プールからの燃料取出しにおいて、非常に重要な1年になるのだろうと思っている。
【3月11日とは】
Q小野プレジデントにとって3月11日とは?
もともとは原子力技術者なので、1Fの状態を色々とシミュレーションした。こうやったらいいんじゃないかとか。それがうまくいかないと考えたときに、今まで自分が取り組んできたことが正しかったのか、十分だったのかということを考えさせられた。
内省の日とよく言われるが、自分なりにもっと何か事故が起きる前にできたのではないかという反省はある。
後悔というより、反省をして次につなげる日にしたいし、そういうつもりで廃炉にあたっている。