2025福島県当初予算可決・成立 8つの"重点プロジェクト"とは?

福島県2025年度当初予算が可決・成立
3月19日、福島県議会2月定例会は2025年度当初予算案などを可決して閉会した。
2025年度の福島県の当初予算総額は1兆2817億9900万円。全体として前年度の当初予算よりも437億円(3.5%)増え、復興・創生分については1割以上の増額。県は「復興・再生」と「地方創生」を両輪で進める「ふくしま復興・創生推進予算」として、8つの重点プロジェクトを示している。
【重点プロジェクト1:避難地域等復興加速化】
県が8つの重点プロジェクトと位置付けているもののうち1つは「避難地域等復興加速化」で43事業650億円。
避難地域の復興と期間促進に向け、物流や産業再生などを支えるための8路線の整備「ふくしま復興再生道路整備事業」に約170億円。
避難地域の12市町村が被災農業者に対して貸与する農業用施設や機械の整備費用「被災地域農業復興総合支援事業」に約169億円。
Jヴィレッジの全天候型練習場の管理運営を行うための費用など「Jヴィレッジ利活用促進事業」に2億円あまりなどを計画している。
2025年度は「第2期復興・創生期間」の最終年度。2024年に実施された国の行政事業レビューで「福島再生加速化交付金」をめぐり有識者から見直しの意見が上がる一方、石破首相は県内の訪問で、今後の復興事業について「今の事業規模を十分に超えるものにしたい」としている。
【重点プロジェクト2:人・きずなづくり】
重点プロジェクト2つ目は「人・きずなづくり」で41事業97億円。
避難地域12市町村への移住を促進するため、支援センターの情報発信の強化や移住者への支援金などの事業に約13億5000万円。
福島の正確な情報を国内外に発信する風評・風化の対策事業に1億円あまり。
語り部団体等のネットワーク化など「次世代へつなぐ震災伝承事業」に約2500万円などを計画している。
福島県によると、2023年度の県内への移住世帯数・移住者数(定住・二地域居住)は2437世帯・3419人で過去最多。
引き続き、移住・定住・交流人口の増加に向けた取り組みを継続したいとしている。
【重点プロジェクト3:安全・安心な暮らし】
重点プロジェクト3つ目は「安全・安心な暮らし」で79事業688億円。
避難地域の復興のために必要な道路や歩道の整備「原子力災害被災地域道路整備事業」に約331億円。
放射性物質を監視する環境モニタリング事業などに約15億円。
老朽化している学校設備の大規模改修などに20億円あまり。
帰還困難区域からの避難者の帰還を促進するため、住宅再建費用を支援する「帰還促進強化支援事業」に4億円あまりなどを計画している。
国は希望するすべての住民の2020年代の帰還を目指しているが、物価や資材の高騰で帰還をためらっている人に対し、県としても帰還を後押しするような施策を実施したい考え。
【重点プロジェクト4:産業推進・なりわい再生】
重点プロジェクト4つ目は「産業推進・なりわい再生」で70事業751億円。
東日本大震災で事業活動に影響を受けた中小企業対象者に対する資金繰り支援など「ふくしま復興特別資金」に約416億円。
再生可能エネルギー水素関連産業の育成・集積を推進する「福島新エネ社会構想等推進技術開発事業」に約11億5000万円。
震災後に落ち込んだ農林水産物のブランド力強化のための「ふくしまプライド農林水産物販売力強化事業」に約14億円。
花粉の少ない森林づくり事業に2200万円あまりなどを計画している。
県産の農林水産物については徐々にブランド力が回復しているものの、2025年2月現在で6つの国と地域で輸入の規制が続くなど、完全な回復には至っていない。
また、2023年8月から始まった処理水の海洋放出に伴い、東京電力が2025年1月末時点で取引中止の損害などに対し500億円あまりの賠償を支払っている。
【重点プロジェクト5:輝く人づくり】
重点プロジェクト5つ目は「輝く人づくり」で126事業164億円。
市町村の子ども・子育て支援計画を支援する「地域の子育て支援事業」に約36億円。
不妊治療の費用の助成や診療体制強化などに約3億円。
子どもたちが体を動かす機会を確保するための「屋内遊び場確保事業」に2億3000万円あまり。
アプリを活用したバーチャルウォーキング大会の実施など「ふくしま脱メタボプロジェクト事業」に約1億8000万円などを計画している。
福島県によると、県民はメタボリックシンドローム該当者の割合が全国ワースト4位、食塩摂取量はワースト2位、喫煙率はワースト1位など、生活習慣に関する指標が厳しく、がんや脳血管疾患、心疾患などの生活習慣病の死亡率も全国ワーストクラスとなっていて、県が状況の改善を目指している。
【重点プロジェクト6:豊かなまちづくり】
重点プロジェクト6つ目は「豊かなまちづくり」で63事業614億円。
再エネ事業の立ち上げ支援など「再生可能エネルギー普及拡大事業」に約15億6000万円。
阿武隈山地や沿岸部での再エネ発電設備の導入支援などの「再生可能エネルギー復興支援事業」に約13億6000万円。
脱炭素事業に取り組む民間事業者の支援など「再生可能エネルギー地産地消支援事業」に約10億5000万円。
市町村へのデジタル関連アドバイザーの派遣など「デジタル変革(DX)推進事業」に約4億7000万円などを計画している。
福島県は、2040年度頃を目途に県内エネルギー需要の100%に相当するエネルギーを再生可能エネルギーから生み出すことを目標としていて、2023年度の実績は54.9%。
【重点プロジェクト7:しごとづくり】
重点プロジェクト7つ目は「しごとづくり」で49事業779億円。
中小企業の経営基盤の強化を図るための事業資金を提供する「中小企業制度資金貸付金」に約650億6000万円。
県内外の若い世代に向けて県内企業で働く魅力を発信する「『感働!ふくしま』プロジェクト」に約4億8000万円。
「スタートアップの地ふくしまの創造」を目指すための起業促進などに2億円あまりなどを計画している。
福島県が2022年度、県内の大学に通う学生や県内出身で県外の大学に通う学生などを対象に実施した調査では、内定先の勤務地は県内・県外が概ね半々になっていて、県内出身者が県外の企業に就職を決めた理由は「福島に志望する企業がない」が最も多く6割超。
県は、人材流出を食い止めるために職業体験イベントなどを実施している。
【重点プロジェクト8:魅力発信・交流促進】
県が8つの重点プロジェクトと位置付けているもののうち1つは「魅力発信・交流促進」で33事業43億円。
個人を対象とした県内でのテレワーク・くらし体験の支援など「転職なきふくしまぐらし。」推進事業に約1億3000万円。
只見線の魅力を発信する「ひとつ、ひとつ、つなげる、只見線利活用事業」に約1億円。
猪苗代湖の水環境保全の機運を高める「猪苗代湖魅力向上・発信事業」に約1900万円などを計画している。
福島県では2026年4月から6月、JRグループと連携した大型観光キャンペーン「ふくしまデスティネーションキャンペーン」が開催されることが決定していて、2025年4月からはプレ開催される。福島県内を訪れた観光客は、前回のデスティネーションキャンペーンが行われた2015年に、前の年から300万人あまり増えて震災後初めてとなる5千万人台に回復。経済波及効果は約295億円と試算されている。
福島県ではこの機会などをとらえて、県の魅力を発信していきたいとしている。