郡山市長選挙の争点 防災・減災の課題 度重なる水害への対応と想定外を見据えた対策【福島発】
新人4人が立候補し、4月20日投票が行われる福島県郡山市の市長選挙。今回は、郡山市の「防災」について考える。豪雨などによる被害が繰り返されるなか、求められる命を守るための取り組みは?
■水害に見舞われてきた郡山市
これまで度々台風やゲリラ豪雨の被害に見舞われてきた郡山市。山地に囲まれ、水が集まりやすい地形で、特にJR郡山駅の周辺は冠水などの被害が発生しやすい場所だ。
「ここからはもう水浸しだったですね、ここまで来れなかった。ここ通れなかったからねずっと」と話すのは、郡山駅近くの大町に住む橋本幸信さん。
この地区一帯は冠水が多発する場所で、2019年の東日本台風では多くの住宅が浸水被害を受け、1人が死亡した。
「(水が溜まったのは)2メートルくらいでしょ、住む人がいなくなっちゃうからね」と当時を振り返る橋本さん。
橋本さんの家はギリギリのところで被害を免れたが、毎年全国で相次ぐ水害に危機感を募らせている。
橋本幸信さんは「昔は10年に1回とか言われてたけど、毎年のようにあるでしょ?そこは不安は持ってるので、そこに住まない訳にいかないから、何とかしてほしいってことでね」という。
■水害への備えに一定の効果
市内の東部にある古川ポンプ場。毎月2回点検を行い、いざという時に正常に稼働するかどうか、確認作業を行っている。
郡山市上下水道局水道保全課の古川幸市課長は「道路とか建物の浸水それを防ぐために、ポンプで強制的に水を吸い上げて川に流す施設となっております」と説明する。
水害への備えとして2016年から「ゲリラ豪雨対策9年プラン」を掲げて対策に乗り出した郡山市。市内に6つあるポンプ場の整備のほか、周辺に降リ注ぐ雨を一時的に溜める「雨水貯留施設」を設置。県や国も河川の掘削や拡張工事を進めていて、一定の効果は現れているという。
郡山市水道保全課の古川課長は「令和6年度の実績ですと、14日間で大体44回雨水がそこに入っているというような実績がございます。それによって、今までですと溢れていたかもしれない道路上の水、それが貯留されたことによって、浸水被害に貢献しているものと考えております」と話す。
■個別避難計画の作成に課題
一方で課題の1つが、高齢者や障がいを持った人が円滑に避難を行うための「個別避難計画」の作成だ。個別避難計画には、対象者の避難ルートや持病、薬の種類、必要な支援などが記され、本人だけでなく住民同士の「共助」という意味でも重要な仕組みだ。
郡山市保健福祉部の門澤康成部長は「必要性について、行政としてその説明が十分できているかという部分も課題としてございます」という。
相馬市などでは、ほぼ全ての個別避難計画を既に作成済だが、都市化が進む郡山市では、住民同士のつながりが希薄な所もあり、1万4千人の対象者のうち作成が完了しているのはわずか56人にとどまっている。
郡山市の門澤保健福祉部長は「今にでも災害って起こる可能性ってあるんですよね。我々行政としては、そうなったときのことを常にですね、頭に置きながらこの事業っていうのは、一刻も早く進捗を図っていきたいという風に考えてます」と話した。
度重なる水害への対応に頭を悩ませてきた郡山市。「想定外」を見据えて、多角的な視点からハード、ソフト両面での対策が急がれる。
■各候補者の主張
<防災・減災について>
勅使河原候補は「流域治水対策を推進し、自主防災組織の育成やICTを活用」
高橋候補は「防災を首都圏クオリティーにするため人口を増やす」
椎根候補は「河川改修や雨水貯留施設の整備、建物の耐震化と消防団への支援」
大坂候補は「水害や地震の時の避難施設の確保、耐震・バリアフリー化を進める」
(福島テレビが行った候補者アンケートから)
郡山市長選挙は、4月20日投票、即日開票される。