算数・理科が苦手? 克服の兆し見えた「学校カルテ」 オーダーメイドの対策で学力向上へ【福島発】
4月17日に行われた「全国学力テスト」。福島県の2万8000人あまりの児童生徒が臨んだ。福島県では算数・数学が全国平均を下回る状況が続いている。そんな中、いわき市が始めた取り組みで、県平均を上回る結果を出しているという。
■福島県 算数・数学が苦手?
全国学力テストの直近3年間の平均正答率を見てみると、「国語」は小学生・中学生ともに全国平均とあまり差がない。しかし「算数・数学」は全国平均を下回る状況が続いている。
特にその傾向は「中学校」で顕著になっていて、2024年度は全国平均と比べて4.5ポイントの開きがあった。
そうした中、全国平均との差が縮まりつつあるのがいわき市だ。
■いわき市 県平均を上回る
いわき市の児童・生徒も「算数・数学」は苦手なようで、全国平均を下回る状況が続いているが、そうした中でもい2024年度は小学生と中学生いずれも福島県平均を1ポイント上回る結果になった。
こうした学力向上に結び付いた要因の一つとみられているのが、いわき市の教育委員会による「学校カルテ」という取り組みだ。
■生徒が主体的に進める授業
いわき市の中央台南中学校・2年生の理科の授業。この日は、条件を変えてホットケーキなどを膨らませる実験のレポートをまとめていた。
目指しているのは、先生が一方的に伝えるのではなく、生徒が自らの考えを自信をもって発表し、お互いを認め合える授業だ。
生徒からは「皆で話し合いながら、意見を言い合ったりするのが楽しい」「記憶に残るので、教科書でササっとやるよりも自分でやった方が覚えられるなと思いました」との声が聞かれた。
このような授業を展開するきっかけになったのが、自分の能力を信じる意識などが低いとする「学校カルテ」の指摘だった。
山際裕之校長は「学校カルテを踏まえながら、子ども達が主体的で、周りの子ども達と協働して取り組むような授業を目指している」と話す。
■オーダーメイドの学力向上策
この「学校カルテ」とは、いわき市教育委員会が2022年から取り組んでいるもの。
全国学力テストなどの結果をもとに、学校ごとに学力や学習意欲などの状況を分析し、それぞれの学校の事情に合わせた、いわゆる"オーダーメイド"の指導につなげられるのが特徴だ。
いわき市教育委員会の学力向上アドバイザー・塚本英樹さんは「いわき市全体の平均で学力向上策となっても、学校数が多いためなかなか実態に合わない部分も出てくる。それぞれに応じた解決策で取り組んでもらう」と説明した。
■学校も期待を寄せる取り組み
この「学校カルテ」をもとに授業を進めていた中央台南中学校。山際校長は「経験を通して学ぶとか、周りの子達と話し合ったり協働したりして学ぶことによって、今後社会で生きていくために必要な力が身に着くのでは」と考えている。
いわき市教育委員会では、学力向上アドバイザーが5月以降に順次各学校を訪問して、校長などと面談し各学校の取り組みを支援していくという。
さらに7月下旬に公表される全国学力テストの結果は、11月に完成を予定する2025年度版の学校カルテに反映。学力向上に向けて取り組んでいくとのこと。
学校カルテは、これまでリニューアルを行うなど進化を続けていて、今後の展開にも期待したい。学力向上に向けた、試行錯誤が続いている。