ニュース

【"燃料デブリ取り出し"のギモン】分析を行う「JAEA」って何者?<福島第一原発>

福島第一原子力発電所2号機では、11月7日に、事故で溶け落ちた核燃料=燃料デブリの試験的取り出しが完了し、11月12日に事故後初めてデブリが原発構外へ輸送された。

取り出されたデブリの重さは約0.7グラム、放射線量はデブリから20センチの距離で1時間あたり0.2ミリシーベルト。

燃料デブリは第一原発での高い放射線の「発信源」となっていて、廃炉作業の大きな障壁となっているほか、これに触れた雨水や地下水が汚染水となって、大部分の放射性物質を取り除く処理をして「処理水」としてから海洋放出されている。

事故後初めて取り出された燃料デブリは日本原子力研究開発機構(JAEA)の大洗研究所に輸送された。
この大洗研究所と、同じくJAEAの原子力科学研究所、そのほか日本核燃料開発株式会社(NFD)、MHI原子力研究開発株式会社(NDC)の4つの施設で分析が行われる。

【分析の中心となる「JAEA」って何者?】
日本原子力研究開発機構=JAEAは、国立研究開発法人のひとつ。
公共上の理由から確実に実施されることが必要な事業を行うために法律に基づき設置される「独立行政法人」のうち、研究開発を行う法人のことで、その運営費は国庫から支出される運営費交付金や補助金が大部分を占める。
JAEAは「原子力に関する総合的な研究開発機関」として、国が策定した目標に従って、研究開発を行っている。
茨城県や福島県だけでなく、北海道・福井県・岡山県などにも施設を持っていて、燃料デブリ以外にも、新型の原子炉の研究開発や放射性物質の処理・処分に関する研究も行う。

福島第一原発に隣接する敷地でもALPS処理水の分析を、東京電力とは別の「第三者機関」としての立場から行っていて、燃料デブリなど高線量の放射性物質の分析を行うことができる施設も、この近くで建設準備が進められている。

【デブリに関する研究実績は?】
JAEA大洗研究所などでは、1979年にアメリカ・スリーマイル島の原発事故で発生した燃料デブリの研究も行ってきた。
デブリの線量は極めて高く、厚さ1メートルの鉛入りガラス越しで取り扱われるなど、施設の中でも特殊な設備がある場所で実施される。

福島テレビがこれまでに実施したJAEAへの取材では、
■スリーマイル事故:溶け落ちた燃料が圧力容器のなかに留まった
■福島第一原発事故:
燃料が圧力容器を突き破り格納容器の底にあるコンクリートと混ざり合った
という点に違いがあり、研究者は「核燃料が格納容器の下に流れコンクリートと高温で反応したというのは福島第一原発事故以前には前例がない」としている。
JAEAでは、核燃料の主な成分であるウランに、金属やコンクリートなどを混ぜた「模擬デブリ」を使った研究を進めている。様々なパターンでこの「模擬デブリ」を作っていて、第一原発から取り出された燃料デブリがどのパターンに近いかなどを分析しながら、事故時の状況を明らかにしたい考え。

【JAEAでなくてはだめなの?】
JAEAは「数グラムの燃料デブリでも、事故時の炉内状況の履歴を持っているため、分析結果から様々な情報を得ることで、より現実に近い炉内状況推定図の作成が可能となり、燃料デブリ取り出し方策の検討へ貢献することができる」としている。
複数の施設でそれぞれの特徴や専門性を活かした分析を実施する方針で、スリーマイルのデブリの分析知見などが活かされることが期待されている。

一方、1995年に高速増殖原型炉「もんじゅ」でナトリウムの漏えい事故が発生し、2017年には大洗研究所でも、放射性物質の入った容器を点検していた作業員が汚染・被ばくするという事案が起きるなど、放射性物質の取り扱いの難しさを露呈している。

今回、分析対象となるのはわずか0.7グラムの燃料デブリ。
微量の試料からどこまでの情報を引き出し、今後の廃炉にどう貢献できるか、研究機関として積み重ねてきた知見と技術が問われている。


【これまでの経緯】
■2021年:当初の試験的取り出し着手予定
⇒ロボットの開発遅れ、経路への堆積物の詰まり発覚などで延期
■2024年8月22日:試験的取り出し着手を計画するも「現場での棒の順番ミス」が発覚し取りやめ
⇒東京電力が現場に立ち会っていなかったことなどが問題に。
管理体制の見直しを行う。
■2024年9月10日:試験的取り出し作業に着手
■2024年9月14日:ロボットが一度デブリをつかむ
■2024年9月17日:カメラ4台のうち2台の映像が見られなくなるトラブルで中断
⇒高い放射線が影響でカメラ内部に電気がたまり不具合を起こしたと推定。
カメラ交換を決断。
■2024年10月24日:カメラの交換作業を完了
■2024年10月28日:試験的取り出し再開
■2024年10月30日:デブリの把持・吊り上げに成功
■2024年11月2日:デブリを事故後初めて格納容器外へ取り出し成功
■2024年11月5日:放射線量が「取り出し」基準クリアを確認
■2024年11月7日:試験的取り出し作業完了
■2024年11月8日:デブリの水素濃度などが輸送の基準を満たすこと確認
■2024年11月12日:事故後初めてデブリを第一原発構外へ 研究施設へ輸送