JAEA「デブリ表面に広くウランが分布」・東電「ロボットアームが配管に引っかかる可能性」<第一原発>
福島第一原子力発電所2号機で、事故後初めて採取に成功した燃料デブリについて、分析を行う日本原子力研究開発機構(JAEA)は2025年1月30日、X線を使った表面分析の経過を公表し、核燃料の主な成分であるウランが「採取デブリの表面に広く分布」と公表した。
2024年11月に採取デブリを受け入れたJAEAでは、表面分析を行ったあと、ステンレスの棒でデブリを砕き、複数の研究機関に輸送している。
【採取デブリの分析機関】
■JAEA大洗原子力工学研究所
採取デブリ約0.7gを受け入れ
分析:X線を使った表面分析などを実施
■JAEA原子力科学研究所
輸送量:0.1g程度
分析:化学分析(主要元素組成、ウラン同位体比、放射能濃度の評価)
■大型放射光施設SPring-8
輸送量:0.01g未満
分析:固体分析(微小結晶構造、ウラン価数の評価)
■MHI原子力研究開発株式会社(NDC)
輸送量:0.1g程度
分析:化学分析(主要元素組成、微量元素組成、ウラン同位体比の評価)
■日本核燃料開発株式会社(NFD)
これから採取デブリの一部を輸送予定
JAEAは、今後半年から1年をかけて詳細分析を実施し、各分析機関での分析で得られた成果を通じて、今後の燃料デブリ本格取り出しに向けた工法、安全対策や保管方法の検討に貢献したいとしている。
燃料デブリの試験的取り出しをめぐって国と東京電力は「2025年春に2回目の採取に着手する方針」としている。前回採取に成功した「釣り竿型」のロボットを使用する方針。
一方、78億円をかけて製作した大型の「ロボットアーム」については、一部のケーブルが経年劣化で断線し交換したことを明らかにしていて、点検や修復の時間が今後の計画に与える影響は明確に見通せていない。また、ロボットアームに搭載するカメラを追加して実際の環境を模擬した試験を行ったところ、配管に引っかかったため、ロボットの位置や角度を再調整する必要が出てきたという。東京電力は「ロボットアームを使用して2025年度後半にも燃料デブリの採取に着手する、という計画は変わっていない」としている。
福島第一原発の1号機から3号機にあるデブリは約880tと推計。
国と東京電力は2051年までの廃炉完了を掲げている。
【燃料デブリ試験的取り出し・これまでの経緯】
■2021年:当初の試験的取り出し着手予定
⇒ロボットの開発遅れ、経路への堆積物の詰まり発覚などで延期
■2024年8月22日:試験的取り出し着手を計画するも「現場での棒の順番ミス」が発覚し取りやめ
⇒東京電力が現場に立ち会っていなかったことなどが問題に。
管理体制の見直しを行う。
■2024年9月10日:試験的取り出し作業に着手
■2024年9月14日:ロボットが一度デブリをつかむ
■2024年9月17日:カメラ4台のうち2台の映像が見られなくなるトラブルで中断
⇒高い放射線が影響でカメラ内部に電気がたまり不具合を起こしたと推定。
カメラ交換を決断。
■2024年10月24日:カメラの交換作業を完了
■2024年10月28日:試験的取り出し再開
■2024年10月30日:デブリの把持・吊り上げに成功
■2024年11月2日:デブリを事故後初めて格納容器外へ取り出し成功
■2024年11月5日:放射線量が「取り出し」基準クリアを確認
■2024年11月7日:試験的取り出し作業完了
■2024年11月8日:デブリの水素濃度などが輸送の基準を満たすこと確認
■2024年11月12日:事故後初めてデブリを第一原発構外へ 研究施設へ輸送
■2024年12月26日:JAEA「採取デブリからウラン検出」公表し「典型的な燃料デブリ」と評価
■2024年12月:デブリの非破壊分析が完了・分析機関に分配するためデブリを砕く
■2025年1月8日:JAEA「5つの分析機関への分配決定」公表
■2025年1月10日:デブリの一部をJAEAからMHI原子力研究開発株式会社(NDC)に輸送
■2025年1月22日:デブリの一部をSPring-8とJAEA原子力科学研究所に輸送完了