福島テレビ ニュース番組で初めて手話放送を導入 「耳の日」きっかけに情報アクセシビリティ向上を目指す

福島テレビが「耳の日」に初の手話放送を実施した。聴覚障がい者への配慮が地域社会に広がりを見せている。
<見て分かる緊急走行 聴覚障がい者に配慮したパトカーが登場>
3月3日の「耳の日」を皮切りに、福島県警察本部は聴覚障がい者に配慮した新型パトカーの運用を開始した。一見すると通常のパトカーと変わらないが、その特徴は警光灯にある。新型パトカーは、パトロール時と緊急走行時で警光灯の点滅パターンが異なる仕様となっている。
パトロール時は2秒周期でゆっくりと点滅し、「ホタルの光のように優しく光る」という。一方、緊急走行時は0.5秒周期で素早く点滅する。この違いにより、聴覚障がい者も視覚的に緊急性を判断できるようになった。
福島県聴覚障害者協会の吉田正勝会長は「緊急走行の時はすぐに避けなくてはならないということが見て判断できるので分かりやすい」と評価している。これまで、サイレンの音が聞こえないために緊急車両の接近に気づきにくかった聴覚障がい者にとって、大きな進歩といえるだろう。
県警察本部は、今後もこの新型パトカーを順次増やしていく方針だ。この取り組みは、聴覚障がい者の安全と安心を守るだけでなく、すべての市民にとってより安全な交通環境の実現につながることが期待される。
<テレビ画面に手話が登場 情報格差の解消へ一歩>
同じく3月3日、福島テレビは夕方のニュース番組「テレポートプラス」で初めて手話放送を導入した。この画期的な試みは、福島県聴覚障害者協会の協力のもと実現した。
スタジオには手話通訳の五十嵐永子さんを招き、約1時間にわたる収録が行われた。新型パトカーの導入を伝えるニュースでは、警光灯の点滅パターンの違いなどを手話通訳付きで放送。聴覚障がい者にとって重要な情報を、より分かりやすく伝える工夫が施された。
この取り組みは、福島テレビが目指す「情報アクセシビリティ」向上の一環だ。年齢や障害の有無に関係なく、誰もが必要な情報を受け取ることができる社会の実現に向けた重要なステップといえる。
<デフリンピック開催で地域に広がる共生社会への意識>
福島テレビの挑戦は、2025年11月に控える大きなイベントとも深く関連している。聴覚障害者のためのスポーツの祭典「デフリンピック」が、日本で初めて開催されるのだ。
福島県では、楢葉町のJヴィレッジでサッカー競技が行われることが決定している。100周年の記念大会となる今回のデフリンピックは、地域社会に大きな影響を与えることが予想される。
すでに各地で盛り上がりを見せ始めているこの大会。福島テレビは、大会の熱気を伝えるだけでなく、聴覚障害者への理解を深める機会としても活用していく方針だ。手話放送の導入は、その取り組みの第一歩といえるだろう。
今回の手話放送導入やパトカーの新仕様は、聴覚障害者のみならず、地域社会全体にとって大きな意味を持つ。情報格差の解消は、共生社会の実現につながる重要な要素だ。福島テレビは今後も放送内容の充実を図り、誰もが暮らしやすい地域社会の形成に貢献していく考えだ。
デフリンピック開催を契機に、福島県全体で情報アクセシビリティの向上や障害者への理解が進むことが期待される。地域メディアとしての福島テレビの挑戦が、どのような変化をもたらすのか。今後の展開が注目される。