ニュース

最初の避難指示解除から5年 原発事故で全町避難の福島・双葉町 戻らぬ人口・中間貯蔵施設...現状と課題

東京電力・福島第一原発の事故で全町避難を余儀なくされた福島県双葉町で、最初の避難指示が解除されてから2025年3月4日で丸5年が経った。原発事故から9年を経て、初めて避難指示の一部が解除された双葉町。町が「働く拠点」として位置づけた中野地区では、現在県内外の18の企業が事業を始めている。

<復興支えるガソリンスタンド>
国道6号線沿いにあるガソリンスタンドで、社長を務める吉田知成さんは、いち早く双葉町に戻り、2017年にガソリンスタンドを再オープンさせた。
「6号線の自由通行ができるようになって、それに伴って復興工事が本格化していく。本格化するのにあたって必要なのが燃料ということで」と吉田さんは話す。
今も利用者の9割が復興工事関連だが、再開当初と異なり少しずつ町に人の姿が戻っていることを感じていた。
「音が変わったというか、前は工事の音しか聞こえなかったような状態のところに、人の声がいっぱいする。昔から比べれば生活の音が変わってますし、流れる空気感も変わってると思いますけどね」と吉田さんは語る。

<課題 人口2000人の目標>
双葉駅周辺にスーパーや商業施設の建設が予定されるなど、環境の整備が進む双葉町。一方、現在町内で生活する人は181人で、2030年ごろまでに人口2000人の目標に向けて課題も残る。
吉田知成さんは「人が増えたからインフラが出来上がるのではなくて、インフラが出来上がって、皆さんを双葉町にお迎えするというか人が帰って来やすい町になってもらえるのが一番かなと思います」と話した。

<課題 除染土壌の行方>
また双葉町で復興の懸念材料となっているのが、除染で出た土を保管する中間貯蔵施設だ。
3月3日に会見に臨んだ伊澤町長は「インフラ整備等の復旧・復興を進めるうえで、土砂が必要となりえるという状況の中で、可能性として申し上げれば、私の残りの任期のうちにターニングポイントが訪れることもありえる」と話し、放射能濃度が比較的低い土を町内で再生利用する選択肢について、4年の間に対応を進める可能性を示唆した。

<再生利用の取り組みは不十分>
福島テレビと福島民報社が、福島県内の711人を対象に実施した世論調査では、除去土壌の安全性については「十分安全だと思う」「安全だと思う」が合わせておよそ半数に。
一方で、再生利用の取り組みについては「県内で理解は広がっているが県外で理解してもらう取り組みは不十分」「県内外ともに取り組みが不十分」とする回答が合わせて7割を超えている。
双葉町の伊澤町長は「自分の本来住むべきところに住めない状況が14年経っているっていうのは、どれだけ大変なことか分かっていただければ、もっともっと復興は進むのではないかと思っています」と話した。