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福島・富岡町の複雑な五差路交差点 円形にすれば事故半減? ラウンドアバウトの利点と難点

福島県富岡町夜の森にある、信号機のない「五差路」。この場所は、桜並木の中心の地点で「桜の開花時期は交通量が多いうえに桜で視界が遮られる」といった声も寄せられていた。こうした危険を解消するために、効果を発揮すると考えられるのが「ラウンドアバウト」だ。

■円形交差点で事故半減?

ラウンドアバウトとは、時計回りに一方通行する信号機のない円形交差点。一般的な交差点と比べると、交錯点と呼ばれる車や歩行者の動線が交わる箇所が少ない。
ラウンドアバウト導入前と後の事故件数を比較したデータでは、その数字は半減している。また、その形状から車の速度も抑えられ、大きな事故になりにくいというメリットもある。
警察庁によると、2023年度末時点で全国に161カ所、福島県内では新地町といわき市のあわせて2カ所のみで、まだまだ珍しい交差点といえる。


■五差路での実証実験

ラウンドアバウト導入の検討に向けた実験が行われたのは、福島県富岡町・夜の森にある交差点。五本の道路が交わる「五差路交差点」で、その複雑さから事故の発生が懸念されている。
今回は、交差点に案内板などを置きラウンドアバウトを再現した。近くの住民など約60人が集まり実際に走行した。
いつもこの交差点を通る大型バスの運転手は「すごくわかりやすいイメージはあったが、実際走ってみるとなると、少し道が狭く感じた」と話す。
今回の実験は、実際の公道をラウンドアバウトに変えて行う福島県内で初めてのケース。道路の形を変更する大規模な工事を行わずに導入できるかを検証することが目的だ。
双葉警察署の佐久間正和署長は「徐々に帰還者も増えてきているので、交通量が今は少ないが徐々に増える可能性もあって、大きい事故防ぐためにもラウンドアバウトは有効」と語る。
福島県内では、今後大熊町と浪江町のあわせて3カ所で導入が予定されている。富岡町の交差点では、実験に参加した人のアンケート結果を取りまとめ、今後の検討に役立てたいとしている。


■慣れるまでは難しい?

警察も事故防止に期待を寄せるラウンドアバウト。福島県の市街地で初めて導入されたのがJRいわき駅近くの交差点だ。
車は左折で進入して左折で退出。対向車との衝突の心配がなく、様々な方向に意識を向ける必要がなくなる。横断歩道を渡る歩行者と、円形の内部を走る車を優先するのがルールだ。
利用者からは「慣れるまで難しいところはある。止まってくれるかな?どっちが優先なのだろう?というのはある」「信号無いから滞りなく行けるのは楽。歩行者も見渡しがいいのであまり危険なく、時間を無駄にせず行けるのはいい」との声が聞かれ、慣れるまでにある程度の時間はかかるが、利用者からは概ね好評だった。


メリットとデメリット

ラウンドアバウトは信号機がないのも特徴で、停電時でもスムーズに通行できるため災害の際に効果を発揮する。
しかし、普通の交差点よりも必要な面積が広いことや、一日の流入量が1万台以上の場合は逆に渋滞が生じる恐れがあることが難点となっている。


国土交通省では交差点の事故防止の観点から全国でラウンドアバウトを増やすため補助金による支援などを行っていて、今後どこまで導入が進むか注目される。