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繰り返される震災関連死 母と兄を亡くした男性 夫を亡くし語り部になった女性 伝えたい思い【福島発】 

福島県では、東日本大震災の地震や津波で1614人が亡くなり196人が行方不明となった。それだけでなく、避難中に病気が悪化するなどして亡くなる「震災関連死」は、2024年11月1日時点で2348人と直近の1年間で9人も増えている。なくならない震災関連死を知ってもらおうと、経験を語り継ぐ女性がいる。

■兄弟でつくった天体観測所
福島県広野町の「星降る里・SUZUKI天体観測所」。
「老後になったときに近くの子どもたちを集めて、(星を)見せられる場所になったらなっていう想いがあって作ったんですよね」そう話す鈴木靖さん。町出身の鈴木さんが、天の川が見られる故郷の夜空に惹かれ、40年前に建設した。協力してくれたのは、人が集まる場所を故郷に作りたかった兄の忠昭さんだった。

鈴木さんは「これは震災前に私の一番上の兄、鈴木忠昭と奥さんの鈴木恵子さんが二人で広野町の子ども達を集めて観測会を開いてくれた時の写真ですね」と話す。
兄弟の思いが重なった夢の天体観測所。靖さんは定年退職した後、2018年に町にUターンしたが、忠昭さんと一緒に夜空を見上げることはかなわなかった。

■震災関連死で他界した家族
原発事故の直後に母の妙さんが亡くなり、忠昭さんも後を追うように1年半後に他界した。2人とも「震災関連死」だった。
鈴木さんは「普段と違う生活、兄もそうなんですけど、母親と奥さんを連れて避難し、親戚の家に行ったりとか、仮設住宅に行ったりとか、いろんな行き来をしてて、普段の生活とは違うような状態に追い込まれて、体も心もすごく疲弊していったんだろうなって」と振り返る。
県内の震災関連死は前の年から9人増え、2348人に上っている東日本大震災。その後、避難所の充実など対策が強化されたが、震災関連死は災害の度に繰り返されている。

■夫と義母を亡くし語り部になった女性
悲劇を防ぐために。忠昭さんの妻・恵子さんが選んだのが"語り部"だった。
恵子さんは「能登(半島地震)もあったり、次々と震災があるなかで、震災関連死はやっぱり防災・減災に重要な位置を占めることが大事かなって」と話す。

■実体験を伝える紙芝居
「かつて夫と地域の子どもたちに星空観察を指導していた、広野町にある『SUZUKI天体観測所』です」
恵子さんはこの日、福島市で震災の記憶を伝えていた。モニターに映し出されるいくつものイラスト、「紙芝居」で訴える。
「大渋滞のなか、なんとか喜多方の娘の家にたどり着いたのが深夜でした。丸二日寝ていないうえに、極度のストレス。姑に異変が生じたのは、喜多方に世話になって12日目のことでした」「お義母さん、ここは広野の家じゃないのよ。喜多方、喜多方なの...」「どうした、大丈夫か?」「なんかお母さんが変なのよ。おかしくなったのかな、ここが広野の家だと思っているみたい」

■伝えられなかった日々
長期にわたる避難生活のストレスで、震災関連死で家族を失う物語。震災後のありのままの自分の経験だ。それだけに、伝えることができない日が長く続いた。
恵子さんは「夫と姑が逝った後、4年目だか5年目あたりで考えた紙芝居なのね。でもずっと、あの紙芝居やると涙になってダメなのよ。(2人の)13回忌終わってやっと、これは思いのある人たちがたくさんいるだろうから、ここで伝えていかなきゃと思った時には吹っ切れたかな」と語る。

■語り部が伝えたい思い
震災直後ではなく、長引く避難生活で経験した悲しみ。恵子さんには伝えたい思いがある。
「知らない世界がまだまだあるっていうことを若い人に、単なる防災・減災の教育をしましょうだけじゃなくて、震災関係には目に見えない色んな世界、こういう世界(震災関連死など)があるんだよっていうことをわかってもらわないと」恵子さんはそう話した。

福島県の震災関連死は被災3県のなかでも突出して多い。原発事故の影響でいまもまだ約2万5000人が避難しているという現状もあり、鈴木さんのような「震災当時」だけでなく「いま」を語れる語り部も必要だ。