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抑止力となるか 山林開発の不適切な工事をめぐる規制強化 メガソーラー建設で被害を受けた住民からは期待

福島県福島市で行われた事業目的の山林開発を審議する会議「県森林審議会森林保安部会」では、福島県いわき市に風力発電所を建設する事業などについて意見が交わされた。
開発をめぐる土砂の流出などを心配する声に対して、事業者は「法令の順守」を改めて約束していた。こうした手続きを経て進められる山林の開発。2025年4月からは規制強化が予定されている。

<不適切な工事 事業者名公表へ>
メガソーラーの建設などで山林を開発する際には、災害や水害を防ぐ対策などが求められている。しかし、対策が取られていなかったり、すでに災害が発生していたりするなど、不適切な工事が発覚した場合、2025年4月からは事業者名が公表される。
災害が発生している場合は、行政指導の対象となり、是正が完了するまでの間事業者名を公表。災害が起きていない場合でも行政指導に従わない場合は処分が下され、事業者名の公表となる。

<公表が抑止となるか>
このような強い措置に踏み切ることになった背景には、不適切な工事が相次いでいることがある。直近10年間で福島県内ではメガソーラーのための林地開発が116件あり、このうち重複も含めて44件が指導・処分の対象となっている。一方、これまで事業者名は公表されていなかった。
福島県は「不適切な事業者として公表されれば負の印象になり業者へのダメージとなる。不適切な開発への抑止になることが期待できる」としている。
このような事業者名の公表は、全国でも4つの県がすでに導入していて、今回の規制強化が不適切な工事の抑止となるのか注目されている。

<不適切工事で被害 西郷村>
一方、メガソーラーの不適切な工事により被害が出た福島県西郷村では「対策の遅れ」を指摘する声もある。
西郷村の村議・大竹憂子さんが定期的に見回っているのが、羽太地区のメガソーラーの建設現場だ。「あれだけ急な斜面なので、崩れないわけがないと私達も見ていて思う」と大竹さん。心配を募らせるのには理由があった。
このメガソーラーは2020年から建設が始まったが、大雨の際に度々周辺の農地などに土砂が流出している。防災工事が適切に行われなかったのが原因で、福島県が工事の中止を繰り返し指示する事態になっている。

<被害を受けた住民の声>
この日、大竹さんは田んぼが被害を受けた住民などを訪ねて、新たなトラブルが起きていないか確認していた。
福島県が2025年4月から始める不適切な事業者名の公表などの新たな対策については「こういう現場が減っていくのではと私は期待している。ただ、早く処置をしてほしいなと思います」と話す。被害を受けた住民からは「いい加減な工事や事業をだと知ってもらうのには、大事なことだと思う」との声も。同じく被害を受けた別の住民は「あのようなでたらめな工事をやっていたのでは、やはり強く県にはやってもらわないと困る」と話した。
西郷村のメガソーラーは、2025年3月に完成を予定している。

<ノーモア・メガソーラー 福島市>
メガソーラーの建設をめぐっては、福島市でも規制強化に向けて動き出している。2月5日に福島市で開かれた環境審議会で話し合われたのは、メガソーラーの設置を抑制する条例案について。この条例案では、市の面積の約7割を禁止エリアに指定することなどを盛り込んでいる。
この審議会で福島市は、市内に設置された26件のメガソーラーの所在地や事業者名などの情報を初めてまとめて公表した。福島市が条例の施行を目指す2025年4月を前に、現状を広く発信することなどが目的だという。

このような規制が進む中、どのようにして再生可能エネルギーを推進していくのか、その方法がいま求められている。