地域に愛される福島・石川町のスケート場 存続危機を乗り越えて子どもたちに“楽しい”を伝える
福島県石川町で40年以上町民に親しまれてきた屋外スケート場。一時は老朽化や赤字で運営の危機となったが、多くの人に支えられスケート文化をつないでいる。未来を見据え、将来のアスリートを生み出す取り組みも進められている。
■次世代に魅力を伝える
福島県の県南地方で唯一のスケート場「石川町スケートセンター」。2025年2月2日、元スピードスケート選手で平昌オリンピック金メダリストの高木菜那さんを招き、講習会が開かれた。高木菜那さんは「楽しみながら自分の目標に向かって努力して、輝いている子どもたちが増えてほしいと思う」と語る。
こうしたイベントは、子どもたちにスケートの魅力を知ってもらう狙いがある。参加した子どもは「楽しかった。速くできるようになった」と話す。
長年、スケートの振興を図ってきた石川スケートクラブ会長の鈴木正幸さんも「ゲストがいて新鮮だった。子どもたちの遊び場みたいな感じで、笑顔が絶えないような施設になってもらいたい」と子どもたちの様子に目を細めた。
■廃止の危機 それでも
町営のスケート場として1982年にオープンしたスケートセンター。町民が参加する大会も開かれ、スケートは国体やインターハイに選手を輩出するなど町のウィンタースポーツの定番になった。
しかし、30年ほど経つと施設の老朽化や運営赤字から廃止の危機に。当時を知るクラブの関係者は、悲嘆に暮れたという。
石川スケートクラブ顧問の南條武義さんは「スケートは、冬の3カ月ぐらいしか利用できない。やはり町としては、そういう施設にはお金をかけたくないという気持ちが強いと思う」と語る。
クラブが中心になって存続活動を展開し、子どもたちの育成につながることなどを訴え、町のスケート文化は途切れなかった。「また国体やインターハイに出てくる選手が出て、さらにはオリンピックに出てくる選手を石川のスケート場から輩出されれば大変うれしい」と南條さんは話した。
■親子2代 伝わるスケートの楽しさ
クラブが週2回開いているスピードスケート教室には、中学生までの子どもたち18人が練習に励んでいる。
町内の小学2年生・遠藤朱莉さんは、スケートを始めて1年。「クロスは難しいけど、なんか速く滑れる」と楽しそうだ。
朱莉さんを温かく見守る母親の千種さんは、この教室の卒業生で、インターハイにも出場した実力の持ち主だ。「いままでやってきた仲間やこれからの子どもたちが、やりたいっていう思いでまた活気づいて人が集まるようになったのが、すごくうれしい」と話し、子どもたちと一緒にリンクを滑り、スケートの楽しさを伝えている。
■オリンピック出場が目標
多くの町民が守り続けてきた石川町スケートセンター。その思いは教室に通う子どもたちに引き継がれていた。
目標を子どもたちに聞くと、遠藤朱莉さん(小2)は「もっと速くできて、どんどん進んでいくようにしたい」と話す。また小澤正英さん(小4)は「2034年のソルトレークオリンピックに出て優勝することです」と話してくれた。
このスケート場から、未来のオリンピアンが誕生する日も近いかもしれない。