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福島・高湯温泉の源泉管理で遭難した男性3人が死亡 積雪で有毒ガスが滞留した可能性も 専門家が指摘

福島市・高湯温泉で行方不明となっていたホテルの支配人など3人が死亡した。温泉の源泉管理のために山の中に入り、有毒ガスに巻き込まれた可能性がある。



<源泉点検のため山へ>

「支配人と従業員が戻らない」2月17日午後8時ごろ福島市の高湯温泉にある花月ハイランドホテルから警察に通報が入った。
支配人の男性と男性従業員2人が17日の午後2時ごろ、源泉を点検するために近くの山に入り、その後連絡が取れなくなった。3人はホテルの駐車場から歩いて数百メートル離れた源泉に向かったとみられている。


<行方不明の3人全員が死亡>

警察と消防は18日午前9時から捜索を開始。
午前10時ごろから正午までに行方不明となっていた3人は、意識のない状態で倒れているのが見つかり、その後死亡が確認された。


<高湯温泉の旅館関係者は>

同じ源泉を引く高湯温泉の旅館の安達屋・佐藤由美子さんは「ここまで重大な事案は初めて聞きました。基本的に源泉というのは硫黄ガスが非常に多く出ているということで、一般の方はお入り頂かないようにお願いしている場所になっている当館においても、ガスマスクを着用して点検の際には、きちんと対応して行くような場所になっております」と話す。


<源泉から離れた場所でなぜ?>

3人が見つかったのは、ホテル北側にある山道の入り口から100メートルほどの場所。硫化水素が発生する源泉のすぐ近くではなく、少し距離が離れていた場所でなぜ倒れていたのか?
火山ガスなどの調査をする福島地方気象台の越谷英樹火山防災官は、ある可能性が考えられるという。越谷火山防災官は「雪が多く積もっていて、風が通るところを遮ってしまっていて、ガスが溜まって風でガスを流してしまうとか、そういうのが起こらないっていう場所はあると考えられます」と話す。

越谷火山防災官は『積雪』が風を塞ぎ、源泉から離れた道中でも窪地に硫化水素が滞留していた可能性があると指摘する。

花月ハイランドホテルは「業務の都合で終日取材には応じられない」としている。

<源泉管理の仕事とは>

厚生労働省によると、濃度が20ppm以上で肺炎や気管支炎、数百になると命の危険が及ぶという硫化水素ガス。
福島県猪苗代町で源泉の管理をしている渡部恒一郎さんは「源泉を管理する際は、硫化水素ガスの検知器を必ず持っていく。10~20ppmで警報音が鳴るように設定している」と話す。
「元々ガス抜きの意味もある。木の樋に温泉を流してガスを抜いたりする。そこに硫黄がついた時に掃除をするが、その掃除をする時は結構な濃度のガスが出たりする。ガスを吸わないように、作業は5分から10分でやめて、改めて少し休んでからやるみたいな感じ」と渡部さんは話した。


<専門家が指摘する危険性>

一方、火山性ガスなどに詳しい専門家・産業技術総合研究所の篠原宏志招へい研究員は、硫化水素ガスの危険性について「濃度が濃くなると鼻が麻痺すると言うか、わからなくなる。危ないということが、人間は理解できない。数百ppmになると、瞬時に昏倒するような濃度になると思う。今まで開けた場所を歩いていたのが、非常に狭いところを通らざるを得なくて、そこに踏み込んだ途端に急に濃度が上がるということはあり得る」と指摘する。

温泉街など開けているところでは、ガス濃度はそれほど高くならないという。警察は、今後3人の死因について、詳しく調べる方針だ。